どうしたの珍しい、だなんて言葉が聞こえたかと思えば銀時だ。
気配にまったく気づかない程、気を削がれていたのかと驚いた。
このカフェのこの席に座りどのくらいの時間が経過したのだろう。
まだ明るかったと思う。



「銀時こそどーしたのー」
「え?俺?俺ァあれよ。ほら、あの」
「あ、新作スイーツね…」
「何?エスパー?」



悪いんだけど、他に好きな子が出来たんだよね。
お前とはいい関係でいたいと思ってるよ、俺は。
又、連絡するから。
じゃあね。



そんな下らない言葉を頂いた。
ここに来る前の話だ。
余りにも下らない言葉の羅列に気を失う寸前だ。
こんなクソの塊のような呪詛を吐き出す男と付き合っていたのかと吐き気を覚えるし、
そいつの呪詛が確実に己を蝕んでいる事実に震える。



いい関係でいいたいから。
又、連絡するから。
何て、おぞましい。
どこまでも馬鹿にしやがって。



「…それ、美味しい?」
「ちょっと酸味が強い」
「一口ちょうだい」
「!」



銀時が持つスプーンを奪い取り、淡い桃色のクリームを一口分含む。
甘いものは好きでないがだ。
だから驚いた。
それと、



「…悪い事ばっかじゃないぜ」
「知ってる」
「泣いてんじゃないよ、ほら」
「泣いてない」
「へェ」
「何よ」
「スプーン」



あの、どうしようもない男と別れたのだろう。
だからは数時間も同じ席に座り、
ぼんやりと空を見つめていたのだ。
そうじゃないと楽しめない。
報われない。



「…何よ」
「いつだったら返してくれる?」



いつだっていいんだけど、
出来れば早めにお願いしますと続ける銀時はこちらを見ている。
いつだって気づいていた同じ視線に、今だけは気づかない振りをしている。
これまで通り、銀時は許してくれるだろうか。





春に吹く風





拍手、ありがとうございました!
復活第八十六弾は銀魂から銀時でした。
銀時、拍手しかないのか



2017/3/24