そんなまさか、嘘なんてひとっつも吐いてないよと、
平気な顔で銀時は嘘を吐く。
元々がそういう男なのだと割り切るべきなのだろうが、
こういつだって嘘を吐かれては度々、気が滅入るわけだ。


最近は夜も更けるのが早くなったし、
別にこちらもそう暇ではないわけだし、
だけれどあの夜の理由だけが欲しくてここにいる。


明け方の刺すような日差しに照らされた青白い肌。
軽い吐き気を感じながら目覚めた嘘のような朝。


ああ、しまった。
やっちゃったな。


確かに呟いた男の唇。


知っていたはずの後悔を目の当たりにして、どうしても心は怯える。
何となく寝た振りを決め込み、銀時が消える時間を稼いだ理由はそれだ。
卑怯なやり口だとは互いに思えた。


男が消えた後の冷えた寝具は信じられない程、残酷で、
それなのに数時間前までの熱は僅かばかり残る。
だからその事実が残酷なのだとは気づかずに。


こんな思いをするのは別に初めてでもないのだし、
幾ばくかの虚しい思い出とリンクする。
本気になっては馬鹿をみる。
一瞬だけの瞬きと同じ、その刹那を楽しむべきだ。
期待などしてはならないのだと頭では分かっていた。



「あれぇ、。こんなとこで何してんの」
「…銀時こそ」
「お前、この前さぁ、誰と歩いてたの」
「何?酔ってんの、銀時…」
「妬いちゃうんですけどぉ」



どこぞでしこたま酒を飲んで来た銀時は、どうにも酩酊中で、
馴れ馴れしく肩に腕を回し耳元で囁いてくるのだし、
ジリジリと歩く方向は如何わしい宿屋の方に向けられている。


これは悪い夢の続きだ。
心を痛めるだけの危ない遊戯。


一歩踏み出すのが恐ろしく、心を持ち出される未来が避けられない。
だからって断る術もなく助けを求めるように視線を彷徨わせる。
あれだけ白かった銀時の首筋は酷く赤く染まっていた。



いつの時間も変わらぬ愛を





拍手、ありがとうございました!
復活第九十一弾は銀時でした。
都合のいい男と女。


2017/08/14