あの人がいなくなると雨が降るのよねと、は淋しそうに呟いた。
そうしてすぐに、呟く相手を間違えた事に気づき、気まずそうに笑う。


この、人の女に心を惹かれて暫くになる。
そうして、この女が邪な心でこちらを招きだして数か月。
ドフラミンゴが不在の時にだけ訪れる逢瀬の時間は酷く甘く、恐ろしい程の中毒性がある。


ここ最近は力を入れている何かがあるらしく、ドフラミンゴは頻繁に姿を消す。
一向に厭わないといった様子の彼女、その心に隙間が出来るのも時間の問題だった。
当然だが公の関係であるとドフラミンゴは周知の事実であり、
ローにしたって多少厄介な女だなと思っていた位だ。


最初の歪は、ああ、そうか。
確か、あれも雨の降る日だった。


面倒だとを突っぱねるドフラミンゴの姿と、涙を零すの姿。
一度目にすると、不思議なもので同じような場面に幾度となく出くわす。
思わず反射的に手を伸ばした。
すぐそこにあり、簡単に掴めそうだったから。


淋しい状態の女はやけにか細く愛らしい。
堕ちたと思ったのは、こちらの方だったのかと、気づけなかった。



「…俺が間抜けだったって話だ」
「…」
「そんな事ぁ、分かってる」
「…」



身体だけを重ね合わせ、まるで心が解り合えたのかと錯覚していた。
それは自分も、も同じなのだと。
あの約束の日、予定より早く戻ったドフラミンゴを前に取り乱したの姿。
二人の時間は呆気なく、酷く無様に取り繕われた。


それからどうして家へ帰ったのかは覚えていない。
それからも、あの島を離れるまでの涙を見ていた。



「だから、俺は」



そうして今、曖昧に溶けゆく感触を楽しむ事も出来ず、一人苦しんでいる。
この夜は実際にとローだけを包み、どこまでも運んでいくはずだ。
障害になるべきドフラミンゴもここにはいない。
時間を裂き、現れる可能性さえ今はない。


ボロボロに傷つけられた心は膿み、歪んだ形で今に至った。
瘡蓋の下で一切治らず、未だに膿みをまき散らす。



「…!!」



絞り出すように吐き出したの名前は、響きばかりが嫌に懐かしく、
排泄される精液と共にすぐに熱を失くしていく。


滲む汗、滴り落ちる





拍手、ありがとうございました!
復活第九十三弾は前回の続き、ローでした。
ドフラの女に手を出した若ロー。
その結末。


2017/09/04