そんな柄じゃないと思いながらも眼差しは追っていた。
むさ苦しい野郎ばかりの場面に若い女が紛れ込んでいるからだと思い、
そもそもこんな場所に連れて来てるんじゃねェよ、
だなんて嫉妬染みた悪態を吐いていれば、
下品だなあ欲求不満なの、だなんて
神威から突っ込まれたもので、その真意を知る。


傍から見ても圧倒的に仲は悪そうで、殺意さえ見て取れた。
よくよく聞けば、奴隷からの成り上がりという事で、
大したタマだなと、それまで以上に目を引いた。


幾度かの会合後、声をかけた。
訝し気な女は愛想の一つもない態度で、余計に気に入った。


ウチの副団長は欲求不満なんだなァ。
神威はそう呟き笑っていたように思う。


だから何が言いたいのかというと、
何も始まらない、これからの段階の、あのやけにむず痒い時間が夢のようで、
幾度か交わした身体の温もりが忘れられない。
何も言わず、心ひとつ漏らさず姿を消したあの女が憎くて、
欲しくて、持ち出した心の欠片を返してくれよ。


故郷を燃やされ、敵に生かされたの心は分からない。
この果て無い宇宙を彷徨い、同じように星を滅ぼしながら、
何の意味もない事を知ったのだろうか。
息の詰まりそうな閉塞感に耐え切れず逃げ出したか。


まだ欲求不満なのか。
こちらに背を向けたまま、神威がぽつりと呟いた。



蜘蛛の糸に絡まった蜘蛛





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復活第九十四弾は阿伏兎でした。
今回更新分、『鳴かない魚』のプチエピ。
地球で主人公を見かけた瞬間の一場面。

2017/10/07