明け方近くにふと目が覚めた。
直前まで見ていたであろう夢は欠片さえも覚えておらず、
とりあえず時間を確認すべく充電中のスマホに手を伸ばす。
5:24、余りにも中途半端な時間だ。


眠りは深い方で、どちらかといえば寝起きは悪い。
何故今日に限って目覚めてしまったのか、幾度か寝がえりを繰り返しながら考える。
眠気はとっくに消え去り、もうこれはどうしたって眠れない。
隣に眠るを起こさないように、もう一度寝がえりを打ち背を向ける。


心の中の真ん中近く、その辺りに空いた穴が
いつまで経っても埋まらず空気だけでなく何もかも全てが漏れゆく。
まるで体内が、心が、脳が空っぽになってしまうような感覚だ。
何故そうなってしまったのかは分かっているのだし、
対処法も何となく分かっており、
こうして無様にも誰かを愛そうと努力しているところだ。


まあ、その失礼さが知れている為、
は杉元を受け入れないのだが、それでいいとさえ思える。
いや、そうなるべくわざとこうしている。
その事もは気づいている。


で未だ非生産的な関係を終わらせる事も出来ず、
くだらない時間の過ごし方をしているのだし、お互い様だ。


少し前に帰省した。
帰るべき実家は既にないが、故郷は姿を変えず、
相変わらず寂れた風景のままそこにあったし、
こちらの思いもそのまま残されていたはずが、
思い人は親友と付き合い、もうそろそろ結納でもという、まさかの急展開だ。


家業を継ぐべく進学を諦めた親友の事を思えばそれも当然で、
地元を逃げ出した自分が口を出せる立場ではないと思った。


一言、只、一言。
おめでとうと彼らを祝福し、又、逃げる様に故郷を後にした。


横に眠るが放った、利用している癖にという言葉は単なる事実であり、
確かにの身体を使い、どうにか忘れる事が出来ないか試しているところだ。
だって互いに心奪われた同士だし、心も身体も穴だらけだ。
利害は一致していると思えるのだが。



「…何、あんた起きてんの?」
「えぇ?」
「ちょっと」
「寒くね」
「邪魔なんだけど…」
「寒い」



寒いから、だなんてよく分からない言い訳を口にしながら
半ば眠っているを背中から抱き締める。


これが傷の舐め合いだとして、それが悪い事だとも思えず、
埋まらない穴をこうして持て余すのだ。




君を愛す資格は剥奪されていて





拍手、ありがとうございました!
復活後、栄えある第百弾は杉元でした!
大学生現パロシリーズ、
【死体は海にでも捨ててください】の続きです。
私は杉元に梅ちゃんと寅次をガンガン絡ませます。
栄えあるのに内容こんなかよというね。
自分でもすっかり忘れてて吃驚しました。


2018/03/09