はっと目覚めた最悪の朝、隣には吐瀉物を詰まらせかけた女が一人。
の髪が指先に絡みそれが現実と知る。


こちらが身を起こそうとはビクともせず、
それよりもシーツに広がった吐瀉物に気を取られる。


これが自分のベットでもあれば即刻叩き出しているところだが、
辺りを見回せば案の定、知らない室内で一先ず安心した。


それにしたってこの惨事はどういう事だ。
昨晩の事を思い出そうとしてもまるで思い出せず、随分と悪い酒を浴びたようだ。


この余り新しくないホテルの部屋は狭く、着ていた服は床に散らばっている。
身動き一つしない女が死んでいては大分、事だ。
細い肩を雑に揺さぶる。


は小さな呻き声を上げたもので、死んではいないようだ。
だったらさっさと起きてゲロを片せと、揺さぶる手に力を加えた。



「…最悪」
「こっちの台詞だぜ」
「あぁー」



頭が痛い。
が掠れた声でそう呟いた。



「お前、よく死ななかったな」
「えぇ?うわ」
「勘弁しろよ、寝ゲロとか」
「よかったーホテルで」



はそう笑いベットから抜け出した。
ベットサイドのテーブルには錠剤が数個とジョイントが二本。
この女の所有物だ。
いや、ジョイントは回したかも知れない。


愛されずに生きて来たらしいこの女は、こうして痛みを麻痺させている。
昨晩もアルコールと一緒に錠剤を噛み砕き、
よく分からない状態になりしこたまセックスをした。


日常で嫌な事があった時にはこいつに連絡を取る。
何もかも忘れられるような、ひたすらにくだらないセックスに没頭出来るからだ。


愛されずに生きて来た者達だけが浸れる耽溺。
とても、刹那な、それ。



「お前、長生きは出来ないな」
「そんなの、別にしたくないし」
「まあ、そうか」
「こんなくだらない人生」



明日にでも終わればいいのだと嘯くは、
頭が痛いと呟きながらジョイントに火をつける。
埃舞う部屋の中、癖のある匂いが一気に広がった。




罪人に厳粛な死の裁きを





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第百六弾は尾形(現パロ大学生シリーズ)でした!
愛されない二人

2018/12/17