昔からつま弾きものとして生きて来た。
理由は明白で、異端だったからだ。


生みの親は知らず、育ての親はいない。
あれは親などと上等な名のつくものでなし、
労働力の為にこちらを仕入れただけの生き物だ。


家畜と同等の扱いで飼育されてきた。
何故死ななかったのか、今でも不思議だ。


成長するにつれ、その差は格段と広がり、
やけに白い肌や黄金に輝く髪、青い目。
生き物としての質がまるで違うと身に染みた。


体躯も大きく、同世代の男子程度の背丈はあったし、それなりに力も強い。
力で抑える事は段々と敵わなくなり、
その結果、酷く寒い冬の夜に追い出された。
着の身着のままというやつで、
恐らく凍死してくれれば何よりだとでも思っていたのだろう。


こんな田舎、うんざりなんだよと吐き捨て、
薄っすらと雪の積もり始めたあぜ道を歩き出す。
余りの冷たさに皮膚という皮膚が切れた。


そのまま歩き続け、一晩を越し、
まるで行き倒れるかのように倒れ込んだ先が、
この男のアジトだったわけだ。
山の麓に置かれた、朽ちた寺。


諜報途中の鶴見はそこで伝令の男を待っているところだった。
ここは人目を避けるのに最も適した地域で、兎に角何もない。
貧しい山村がポツポツとあるくらいで、他には何もない場所だ。


そんな場所でまさか、こんな娘と遭遇出来るとは。
娘は所々痛み、自力では起き上がれない程弱っていた。


その後すぐに到着した伝令の男に頼み、
山を一つ越え町医者の元へ駆け込む。


三日三晩寝込んだ娘が目覚めた時、
真っ先に見るのは自分の顔でなければならない。
命を救った恩人を忘れないように。
目覚めた娘の眼は透き通るほど青かった。
娘は己の出生も知らない有様で、鶴見は恐らくの仮説を唱えた。


恐らく、お前は攫われたのであろう―――――
あの貧しい地域では、頻繁に人身売買が行われていた。
子を金で売り糧を得、そうして子を買い糧とする。
お前の見た目が美しいのはそのせいだ。


初めて言われたであろう言葉に娘が驚きを隠せないでいるところを、
間髪入れずに畳み込む。


お前のその美しさを私に預けてくれないか。
元々行く宛もない娘は頷く他なく、そうして手に入れた。
美しく、便利な駒を。


名は
新しいものをくれてやった。
気に入るだろうか。




神の啓示と君の声





拍手、ありがとうございました!
第百八弾は鶴見中尉(若)でした!
存分に利用してくれ

2019/2/5