Baby, what for?




制服を着替え化粧を変える。まああの男と並んでいれば間違っても補導なんてされる事はないだろう。そういえばまともに物を胃に入れたのは何日前だったっけ。どうでもいい事ばかりが頭の中を駆け巡るのは思考がまともに働いていないからだ。待ち合わせは阿含行き着けのラブホ前。真昼間からラブホ街に佇んでいる己を哀れむ余裕もない。この時間帯にこの待ち合わせ場所という事は昨晩はお泊り、という事は女連れで出て来るという事で又してもあの男の悪趣味が爆発するという事だ。動じない、もう慣れた。それにしても先ほどからこちらをチラ見しているリーマン風(それこそこんな時間に何をしているんだ)の男が気に入らない。

「お姉ちゃん、何してるの?」
「何って・・・人待ち」
「幾ら?」
「んー」

時価なんだよねえ。そう言い笑った辺りだろうか。女の嬌声が聞こえ自動ドアの開く音が続く。目の前の男を生贄にしようと が考えたのとほぼ同時だ。立ち上がり男に近づく。誘った割りに驚いたらしい男はそれでも(商談成立だとでも思ったのだろう)歪んだ笑顔をこちらに向けた。

「おい、コラ」
「何?」
「手前、何してんだよ」
「っていうか誰よあの女」
「うるせェな、帰れお前」
「はっ!?」
「行こうか、おっさん。丁度部屋、空いたみたいだし」

阿含をシカトしおっさんの腕を引く。この瞬間が堪らない。この後はお決まりのコースで(勝手に)キレた阿含がおっさんを殴り、そのついでにわけが分からない(のも仕方がない)連れの女が少しだけ騒いだもんだからその女まで殴って最終的に を殴ってカット!

「痛いんだけど」
「知るか」
「何よ、あんなおっさんに妬いたわけ?」
「俺が?馬鹿ぬかしてんじゃねェ」

そうよね、だってあんたが妬くのは。口に出さなくてもどうやら知れるらしく の腕を掴む力が強まる。簡単に折れるんじゃないだろうか、そんな事を考えていれば携帯が震えた。それなのにどうしてこの男が携帯を奪うのだろう。

「返してくんない?それ、あたしの携帯だし」
「・・・雑魚が」
「どうでもいいけど絶対壊さないでよね」

の携帯はこの半年間で六度壊れている。

「俺が出るぜ」
「好きにしてよ、もう」

携帯を壊されるのは勘弁なわけだ。金が(無駄に)かかる。只三度目辺りからメルアドを変える事もなくなり番号を教える事もなくなった。面倒だからだ。携帯を壊す輩は二人いる。どいつもこいつも身勝手な理由で簡単に壊す。阿含は電話の相手と悪態を付き合い笑いながら携帯を返した。

「繋がってるぜ、お話してやれよ、
「もしもし?」

阿含相手の時とは恐らくだがまったく違うトーンで囁くこの男も阿含同様馬鹿なのだと思った はどの道阿含がこの会話を続けさせる気もないと知っている。

「じゃあね」

そつなく切れば又しても身勝手なこの男が勝手に機嫌を悪くしている事実に気づき溜息を吐き出した。


TEENAGE WHORE(HOLE)

これから数話は阿含の話になるんですけど
何だか普通に阿含がスゲエいい奴っぽく(脳内変化)
しておりましてねえ・・・蛭魔が悪人になりそう。