One day my prince will come but Man,




阿含とが頻繁に顔を合わせているという噂は瞬く間に広がった。
どちらも悪評絶える事のない輩だったから引き合わせられたんだと言われたものだ。
目に見えないものなど絶対に信じる事のない蛭魔にしてみれば戯言に思えた。
まだの背に傷が存在しない頃の話だ。
これまでの人生の中で蛭魔が最も傷つけられた時期の話。
その時期があるからこそこうやっての側にいるのかも知れないし
ここまで心が腐れ切ってしまったのかも知れない。






正直な話、蛭魔にとって最初の相手はになる。
場所は蛭魔の部屋。
諸事情により一人暮らしをしていた蛭魔の部屋は格好のスポット (にとっての)になっていた。
時間と蛭魔の都合は一切関係なしに
転がり込んでくるを追い返さなかったのは
心の中で悪いものが囁いていたからであり、
それを甘んじて受け入れていたのは弱さがつけ込んでいたからだ。
まあ、弱さが悪いとは思えない。
兎に角その日は一切の前情報をよこさず訪れた。

「・・・お前、時間」
「寝てたの?あんた」
「・・・」

夜中の三時過ぎ、は酒の臭いを隠さずに現れた。
ドアを開けなければ近隣に響き渡る大声で叫ぶしドアを限りなく叩く。
携帯は鳴り続ける。公害の他ない。
故に蛭魔はドアを開けざるをえなくなるわけだ。


彼女の好む衣装はそれこそ露出の高いものであり
(恐らく阿含も好きだろうが)
蛭魔にとっては似合いもしないと思う化粧さえ阿含には気に入りなのだろう。
又どうでもいい事を考えてしまった。

「ソファーで寝やがれ、糞女」
「嫌よ、背中が痛くなるじゃない」
「うるせぇ」
「シャワー浴びてくる」

何をしているのだろうと常々思っていた。
まったく理のない行動だ。
信じられない事だがに対する蛭魔の行動に利益は一切生じない。
蛭魔自身が一番信じられないでいる事実だ。
どの道今日もは蛭魔のベッドに潜り込み
朝方になれば全ての布団を奪い去り蛭魔は冷えで目覚めるのだろう。
シャワーを浴び終えたは濡れた髪のままベッドに潜り込んだ。

「乾かして来やがれ」
「めんどい」
「風邪引くだろうが」
「優しいねぇ蛭魔」
「あ?」

心配してくれてるの。
の指先が蛭魔の腕に触れた。
何かが違うと気づいたのはその時だ。
思わず身を起こしかければが蛭魔の腕を掴んだ。
空気が淀み酷く重い。
明かりを消さなければよかったと後悔した。
こうなるべきだったのだろうか。 こうならなかった事が不自然だったのだろうか。分からない。 明かりをつけようと腕を伸ばせば指先が掠り淡い明かりが灯る。 の顔は蛭魔の胸元にあった。

「・・・何だ?」
「嫌?」
「手前、何考えてやがる」
「あんたと阿含、どっちと先にヤった方がいい?」
「・・・糞女」

そう言えば蛭魔が引かない事を知っていた。






が阿含とどんな付き合い方をしているのかは まったく想像もつかなかったが蛭魔に対しては完全に甘えきっていた。 依存していたといってもいいだろう。 只自由なのは相変わらずであり放蕩しつくしていた。 そんなに対し何も言わなかったのは気持ちが悪かったからだ。 に対しそういう感情を抱く自分が不自然で気持ち悪かった。 心なんて見なければいいだけの話なのだ。 どの道はこちらへ帰ってくる、 何があっても最終的には自分の元へ帰ってくるのだという確信もあった。

「・・・なぁ
「何?」
「手前、どうして家にゃ帰らねぇんだ」

その質問をした刹那、 蛭魔の腕の中にいたはずのが瞬間遠ざかってしまった気がした。


I'll Do Anything---Courtney Love

すげえ久々の更新。
全面的に蛭魔が被害者チックになってるよ。
しかしここのアイシは勝手に人の布団に入ってくるなあ。