god or the Devil Just gimme a deal




機嫌を損ねると途端に姿を見せなくなる はとんと姿を見せなくなり、だから蛭魔は仕方がないと思う。笑える程素直な女だ。そんな感想を持てるのは焦がれた弱みなのだろう。 を見ればどうしようもない無力感に襲われる。この俺が、毎度そう思い自己満足、否マゾヒステックな感覚に襲われる―この俺が。笑えてくるのだ。だから蛭魔は を望む。答えが見つからないからだ。自分がこんな状況に追い込まれている理由を。 が家に帰らない理由等とっくに知れているのだ。蛭魔の力を持てばその位の捜査は容易い。哀れな、可哀想な女だと思った。そうして知りえた理由を彼女の、 の口から聞きたかったのだ。酷く悪趣味だと自覚していた。







両親が離婚し は母親に引き取られた。丁度彼女が10歳になる年だ。そんな母親はすぐに再婚を果たす。離婚の原因が明白になった瞬間だ。特に父親を好きだったわけではなくとも目前で唐突に女と化した母親を目にするというギークスが耐えられなかっただけ。気分的に、精神衛生的に。 家に寄り付かなくなったは生活を荒ませた。 それでも母親は大して気にもせず は放置されたわけだ。まるで懐かない に義父が業を煮やす、だなんてドラマも生まれなかった。二人は を邪険に扱う事もなく只家族として形作るわけでもなく―新婚生活を送った。彼女の生活が崩れたのは実父が姿を見せた辺りから。


「・・・俺に怒ってたんじゃねぇのか」
「何の話?」
「薬でもやってんのか、手前」
「機嫌悪いのね珍しい」


が笑った。


「今日は何だよ」
「何かなきゃ、来ちゃ駄目だっての」
「まぁ、そりゃ、そうだ」


あの日、蛭魔と寝てからというもの恐らく は誰とでも寝ている。 噂が広がるのは早い。噂の内訳が真実とは程遠いものであってもだ。まあ大体の予想はついている。一度は寝ている、阿含とは。


「安売りしやがって」
「何?」
「安い女だぜ」


安売りの理由を知っている。手を出させない為だ。自己防衛の歪んだ出現。 の父親は完全なる狂人と化した。先天的なものか後天的なものかは分からない。 の母親と結婚するまでは幾らかまともだったのだろう。そうして気が触れたのは離婚するまでの期間―愛していたのだ。 を。 結婚生活はとうになかったとしても不倫を持続していた母親と娘を愛し―身も心も愛し尽くした父親。どちらがモラルに欠けているのだろう。兎も角彼女は幼心ながら純潔の危機を覚えた。初潮を迎えた時に。そうして純潔の守り方を、それが間違いだったとしてもだ。得た。とうに気の狂った実父はとうの経った新婚宅に押しかけるようになる。愛した女を得る為に。


「ヤる?」
「・・・」
「何?嫌なの?あんた」


彼女の必死さが目に見えて、だからそれが嫌だっただけだ。 もっと頭のいい解決法は幾らでもある。頭の悪い彼女を見ている。転がり落ちる様を―


「いいぜ、糞女」


何故なら愛しているから。


I'll Do Anything---Courtney Love

久方ぶりの更新になったアイシ連載。
この連載だけは絶対に終わらせると思う反面
こんなに暗くドロドロとした話はどうだと。
アイシでよくもここまで泥沼な話を・・・