真心気味なDAY

死んだに違いない。
それはもう死んでしまったに違いないのだ。
もしくはそれに限りなくちかい状態かのどちらか。
は延々嘘を吐き続ける、サンジもそれと同等に。
愛していると口走ってみよう、さすればものの見事に死んでしまう。
口惜しいほど愛しければ息が詰まり経過は。
は酷い後悔をした。


「痛いって・・・・・・ねぇ、」
「俺も痛ェよ」


サンジは的外れにもそう答え、は溜息を吐いた。
昼下がりから夜半過ぎまで終始この調子を続けられれば
流石に気が滅入る。
泣きたいのはあたしの方よサンジ、
がそう言えばサンジが酷く下品に笑った。




思い切りをつけ関係を終わらせてしまえば
どれだけ楽になるのだろう。
こんな恋愛の形は有り得ない。
彼女は自分ではない他の誰かを想っているし、それは最初に通告された。
サンジの事は嫌いじゃない、だけどきっと好きにもなれないと思う。
その時はそれでも構わなかった、と言うより先に触れたかったのか。
兎角一度寝てみて、紛い物ではない事を確かめずにはいられなかった。
愛は死んでいるよ。
の想うその誰か(未だに名前一つ教えてもらえない有様だが)
もきっとそうだとサンジは思う。


「・・・・・何やってるのよ、」
「何って・・・・」
「危ないわよそこ、」


揺れでもしたら即効でドボンじゃない。
船の先端に立つサンジの背後がそう言えば、
サンジはやけに身軽く飛び降りる。
終われないのはきっと自分の方だ。
に至っては最初から始まってもいない。


「お前は何やってんの、」
「あたし?」


あたしは空見てるのよサンジ。
は白に近い空を見上げ指差す。
あそこからきっと来るはずだから、
毎日空を見てるわ、俺には何も見えない。


「・・・・・・・そいつ、」
「何」
「戻って来ねェかも、」
「ふふ、」


は何も答えない。
このての会話の時は必ずそうだ。
肯定もしなければ否定もせず只話を逸らす。
青空は果てなく続きこの海も果てなく続く。
そんなものには耐え切れないとサンジは思う。


「今晩、」
「何?」
「あけといてよ
「・・・・何?」
「なあ、」


何よ今更あんたがいつ、あたしの了解なんか取ったっていうのよ。
は呆れたようそう言い、やってられないとばかりに手を振った。
この関係は既に死んでいる、は誰かを待っている。
今すぐにでもこのまま細い背を押し彼女を広大な大海原へ。
目撃者等おらず消えるの姿は白い泡に消え行く事だろう。
鼻歌でも口ずさみ青空の下一人タバコでもふかす。
後悔はしないだろう。罪悪感も感じないだろう。
強く突き放してしまえばいい、宜しく。



「何よ、うるさいわね」
「このまんまじゃあいられねェ、」
「聞き飽きたわよそんなの、」
「お前が死ぬか俺が死ぬか、」
「・・・・・物騒ねぇそれ、」
「どっちが先だろうな」


あんたがその気ならあたしが死ぬんじゃないの?
はそう言い船内へと向かう。
今夜はきっと素晴らしい曲線を描いたお月様が空に昇り、 を待っている自分の元に案の定は来ず―――――
どうせ又同じ気持ちを引き摺ったサンジばかりが残るだけだ。
、名残惜しそうに名を叫べば呆れたは少しだけ振り返る。
あんた本当馬鹿よね、そう言いそうな表情のは微かに笑い、
それをも自身を奪い切る。




「あーら、ゾロ」
「・・・・・・・何やってんだお前」


見張りの合間筋トレをしているゾロ(丁度腕立ての最中だった)
を跨いだは、一度だけ視線をくれたゾロに見向きもせず
夜の海を眺めている。
確か先ほど反対側にはサンジがいたし、
(それはもうゾロの姿を目の当たりにすれば酷い眼差しを向けた)
案外クルー達の行動は謎に包まれている。


「危ねェ、」
「大丈夫よ」
「波が―」


縦揺れする船体、は前屈みに海を見つめている。


「ねえゾロ、」
「何だよ」
「サンジ、いた?」
「あー、あいつならさっき・・・」
「いたんだ、」
「お前の事待ってんじゃねーのかよ」
「知らない、けど」


でもあたしは待ってないから。
君の中の愛はとうに死んでいて、それは永久に認められない。
空の向こう側から何れ参るのは、あの日突如を奪ったあの男だ。
サンジはきっと知る由もない、にしても予測不可能だった。


「めんどくせー」
「は、」
「巻き込むんじゃねーよ、」
「ヤダ冷たーいのね、あんた」
「普通じゃねェの、」


再度筋トレを始めたゾロを又跨いだは反対側へと。
まだ終わらないもう生き返りはしない。
だから愛なんてものはとうに死んでいて、
それでもとサンジの間にそんなものは最初から
余り必要ではなかったのかも知れない。
何故ならばまだ関係は続いているのだから。

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狭い船内で一体何を
2003/10/1