アウェイ

「あ」
「何だ・・・(俄然嫌な予感)」
「今日ってまさかさ」
「おっともう練習に行かねェと・・・」
「イブじゃない!?」
あえてカレンダーを抹消しているのも意味がない。
は気づいてしまった。


「・・・・・何だその目は」
「ん〜〜〜何でもない」
(えっ!?何か買ってくれとか言わねぇのか!?)


はそれ以上何も言わないまでも
いそいそと何かの準備をしている。 シャワー浴びよう、あのピアスどこに置いたっけ、
コートなかったら寒いよね今日。
その独り言に似た会話は伊武が練習に出るまで続けられた(自主練)




「あ、伊武さん」
「あ?何だ高杉じゃねぇか・・・
他の奴らはどうした」
「今日オフっスからね」


高杉の返答に無理があるのを伊武は見逃さなかった。


「・・・・何隠してやがる」
「えっ!?何も!!」
「いいや手前は何か隠してやがる」


ああ下手に練習とか来なけりゃよかった俺―
只サッカーが好きなだけなのに(何よりも)
迫り来る伊武に思わず逃げ出しそうになった自身を押さえ
高杉はとある企画(?)を口にする。
十二月に入り決まったとある企画、
高杉は参加しなかったその企画。


「・・・何、だと・・・」
「いや、だから―」
「う・・・・・」


高杉のジャージ襟首を掴んでいた伊武の手から力が抜け
その場にヘナヘナと座り込む。
そんな馬鹿な否しかしならば遣りかねない―
否めないのがむしろ切ない。
切ないが切なさを抱いている場合ではない
ああ今一体何を思えばいいのだろう―胃が痛い。


「けっ、けどホラ伊武さん!!」
「・・・どこだ」
「え?」
「場所だ、行くぞ」


伊武に連れられ折角のクリスマスイブを
とんだ珍事件に巻き込まれる事になる高杉は
例の凄い車に乗り込みイルミネーション輝く街中へと繰り出す事となる。




「あたしこのピアスが欲しい」
(ショウケイスに人差し指直撃)

「・・・どれや」
(周囲の反応を伺いながら)

「この、シルバーの長いの。赤いやつ」
(ショウケイスに半ば寝そべりながら)

「どっちや、ああ、これな」
(そんなを引き剥がしながら)

「アリガト」


「ええ〜じゃあこの輸入版」
「そのバンドいいっスよね」
(何気に)

「知ってるの?奇遇〜」
(徐に)

「これなんかどうっスかね」
「ええ〜これも知ってんの!?」
(大喜び)


「何か喋んなよ」
「・・・どれがいーんだよ」
(店内の甘ったるさに辟易)

「これ。このキャラメルのチーズケーキ」
「(げっ超甘そう俺絶対喰えねー)・・・」
(頷く)

「おいしそ〜あんたも食べるよね」
「・・・俺は・・・」
(何かもう酔ってる)

「じゃあこのチョコのやつも」
「(両方喰えねーよ)
スイマセンこれとこれ・・・」
(店員に向かい)




緩々と動き始める車内、
伊武は目前の光景になす術もなく
少しだけ本当は泣きそうだったがぐっと堪えた。
最初は騎馬だ、
は騎馬を引き摺りながらとあるショップ
(案外有名なブランドだった)に入り込み小一時間ほど出てこず。
その間高杉はねちねちと伊武の説教
(大体あいつを甘やかすあいつらが悪い、等)を受け
何で出て来ねぇんだあいつら、
等と時には手刀を受けながら悪夢のような時間を過ごしていた。
高杉関係ないのに。
その後ようやく出て来たは騎馬と消えた。
騎馬と消えたはその後大手CDショップに入り
そこから出て来た時には桃太郎宜しく
又一人お供が増えていた、槌矢だった。 二人より前を歩くを後ろに
何かしら話している騎馬と槌矢。
あいつら一体何話してやがんだ、
その後ろを緩々とつける伊武がそう言えども
怪しいのは絶対俺達の方だよな、
高杉は昔から知っている友人の姿を見てそう思う。
その後若い女性ばかりが店の外にまで並んでいる有名菓子店
(本場は欧州のとある国にあるというあれ)に入り
(槌矢と騎馬はすぐにサングラスとキャップ、パーカーを被った)
伊武は車を止める。


「・・・・・あいつら何やってんだ、おい・・・」
「いや〜クリスマスっスね今日」
「・・・集合かけるぞ」
「ええ!?今から!?」
「何だ悪ぃか!!」
「マズイっスよだって・・・」
「手前らサッカー選手だろうがああ!?」
「いや、けど、ホラあんま性急なのも―」


元々練習に来ていたにも関わらず
無理矢理伊武に連れ去られた高杉は助手席で頭を抱える。
コンコン、ふとそんな音が聞こえ顔を上げた、息を飲む。


、さん・・・・」
「あ?」
「あの〜〜見つかってるみたいなんスけど・・・」


ニコリと笑ったはそのままドアを開け
高杉と入れ替わり伊武の運転する車で帰路へとついた。




ある種出稼ぎに出ていた
部屋へ戻り何だかんだと伊武に話しかけている。
ぐったりと疲れた伊武は
無論ケーキなんて食べる気にもなれず。
その頃高杉は何で又あの人(伊武)を連れて来てんだこの馬鹿、
と責められていたらしい。

どうだといわんばかりのね。もうあたしは阿呆だわ。