MIX

「おっちゃんまだやってんのーー??」
「うるせェガキ」
「愛想ないなーー」
「邪魔なんだよ、向こうに行ってろ」
「そんなだから女に振られんのーー?」
「この・・・」

スパナを振り上げたスモーカーの元を
子供達はこぞって逃げ出し甲高い笑い声ばかりが残った。
まだスモーカーが先の事などまるで考えてはいない辺りの事、昔話だ。

只何となく改造を繰り返したバイクを乗り回し
只何となく友達と一緒に遊んで周り只何となくのライフスタイルを。
近所の子供達は不思議と近寄り毎度スモーカーはそれを追い払う、
だから近づいてくるのかも知れない。

実際昨晩は又女と別れた―
実のところ酒を煽り過ぎていた為詳細を思い出す事が出来ない。 只朝目覚めたら女の姿は既になく
何となく別れたのだろうと予想をつけただけだ。

「彼女泣いてたのにーーー」
「うるせェよ」

夢は幻の××年代、
手を伸ばすところに夢は転がりしかしそれは埃に塗れている。
そんな時代に育った。









「あれ〜〜〜?」

スモーカーじゃない?マジで?
突然名を呼ばれ挙句指を指される。
不機嫌そうな視線を上げたスモーカーの目の前には若い女が、
礼儀のなってねェ娘だな、第一印象はそれだ。
突然出現した娘による暴挙、辺りの大人達が顔色を変えた。

「何?覚えてないの?」
「・・・どなただ」
「えー!?ちょっとちょっと海軍――!?!?」

怒鳴りつけたいのは山々だが流石にこの観衆の中だ、
スモーカーが大分無理をしそう言ったにも拘らず
娘は無造作にスモーカーのジャケットを掴む。
海軍!?有り得ないって!!
馴れ馴れしいを通り越し呆れすら。

「へ〜〜〜世の中分かんないモンよねぇ・・・」
「・・・おい、」
「スモーカーが海軍、ぷっ、海軍!
やっぱ有り得ないでしょうそれはどう見ても!!」

腹の底から笑う娘を目の当たりにした瞬間思い出した、
頭の中で閃光が弾けた。
排気臭い街中、廃車同然の車体ばかりが公道の端に路駐され
自由社会の巣窟と化していたあの街を。
この娘は、恐らく。

「・・・・・・」
「あ〜やっと思い出したぁ」
「お前・・・」

一人嫌にはじけた様の娘に成長している、
は長い指でスモーカーを指し
あの街でしか通じない挨拶をしているし
周囲の視線が気になる事気になる事、
俺も大人になったもんだなどと思っている場合でもないのだろう。
その日から少しだけと出会う確率が高くなった。









「可愛いですね、あの娘」
「あぁ?」
「いつも大佐のトコに来てる彼女ですよ」

新兵達の間ではちょっとした人気らしい、
確かに規律のうるさいこの海軍内には
決して存在しないキャラではあるだろう。
可愛らしくて、頭が悪そうで―
頭は悪いのかも知れない、嘘しか吐かない。

「どんな関係なんですか、」
「関係も何もねェよ」
「本当ですか〜〜?怪しいなぁ・・・」
「フン、馬鹿言え」

ガキじゃねェか、
スモーカーはそう言い毎度により持ち込まれる
出土の分からない土産を眺める。
酷く宗教的な香りのするオブジェや嫌に垢抜けたお菓子、
まったく相反するものばかりが室内に増えゆく。
は今何をやっているのか、
自分と同じ考えだとすれば何もしていないに違いない。
あの頃の自分と同じ年齢、危うい年齢か。

「スモーカーいるぅ?」
「あ、話してもいいですかね」
「・・・好きにしろ」

物好きが、
スモーカーはそう言い放ち背もたれにもたれかかる。
躊躇なく開かれたドア越しにの姿が見え
新兵達が何事かを話しかけ―一瞬周囲がざわめいた。
新兵達が見ている、が相変わらずスモーカーを指差している。
他人を舐めきったような眼差しはあの頃とまるで変わりなく、何だ。

「あたしスモーカーが好きなのよ」

指差した娘は透き通った声でそう断言した。
指差された男は眉間に皴を寄せた。
皆一斉に男を見た、男は息を吐き出した。
年齢差はあの頃と変わりなくまったく何が変わってしまったのか、
変わったのはだ、自分は何一つ変わっちゃいないはずなのだ。
相応に生きやがれ、人事ではない気すら否めない。

「スモーカーはどうなの?」
「・・・」
「あたし若いし条件的には結構いいと思うんだけど」

俺にも選択の自由があるだろうよ、
スモーカーは素気無くそう答え残されたのは観衆ばかりだ。








キスしてるじゃない何だってやってるじゃない
夢じゃないのよスモーカー、望郷の念が何かを邪魔する。
もっと愛してよもっともっと頂戴よスモーカー、
ジェネレーションギャップか。

「いい加減諦めたらどうよスモーカー」
「退け、重い」
「重かないわよ!失礼ねあんた」
「育ちの悪ぃ割に―」

あの頃と変わってはいないと思う。
どこで関係が変化したのだろう、
やってる事とやってない事とそれとどれと。
恋愛感情と呼ばれるものが成立するのならば
その定義を頂きたいものだ。

実際、スモーカーを何歳だと思っているのかと。
スモーカーが乗り気だったら泣くね。