wonderland

案外人目を気にしないは突然大声で怒鳴り始めた。
ちょっともういい加減にして、一体いつまで言わせるつもり。
のいう事をまったく聞かなかった事が
どうやら気に入らなかったらしい。
しかも日が悪い。
昨晩ちょっとしたいざこざがあり、
(まあそれはそれでエッチをしたいだとか
したくないだとかそういう痴話喧嘩)
しかもその前にエースはエースで、
気分の悪くなるような出来事も在りしで
歯止めが利かなかった。


「髪切ってよ!」
「ヤダ」
「もっと約束守ってよ!」
「・・・十分じゃねェか」
「もっと・・・」
「・・・・」
「・・・・!!」
「・・・」


人目も憚らない真昼の口げんか。
いつもならば相手にしないエースが
たまたま相手にしてしまった事が何よりの原因だった。









は出会った頃の髪形が好きだったらしい。
時間が経過すれば髪も伸びる。
流石にこの年になれば以前のように背は伸びないが―――――
話が脱線した。
只何となく人に言われればその通りにしたくないこの胸中。
なぁんな事気にしてる場合じゃねェだろ。
互いに互いが要求を聞かない。


「お」
「こりゃ」


どーも。
一人雑踏に紛れ走り去ったを見送っていれば
反対側からサンジが姿を現した。
珍しい再会はやはり偶然に生じるものだと。
どうやらサンジは一部始終を見ていたらしい。
どんな趣味だよ。
そうは思うが余り人の事は言えないと自重。
サングラスをずらしたサンジは
くわえタバコのままエースに近づいた。


「昼間っからお盛んな事で」
「何だいそりゃあ・・・嫌味かい?」
「はは、まさか」


あてられんなあって思って。
今日はここ数年でも稀に見る晴れ日であり、
ぎらつく日光は眩しさばかりか白くさえある。


「探しにいかなくていいんです?」
「あ〜大丈夫だ」
「強気だな」
「そうじゃなきゃ続かねェ」


すんげぇ自信家。
そう言い笑ったサンジはジェラートの売り子に声をかけ、
エースはついでにジェラートを頂戴し、
を探しに出かける。
どんなに膨れ上がった雑踏の中にでも
の姿を見つける事は出来るだろう。
何の根拠もなしにエースはそう思った。

再UP
2004/6/5