カラス、何故なくの

嫌になるくらいいい女の話だ、
妙に鮮明さを失わずだからといって二度はない。
今後あんな女に出会う事はないだろうし
今の自分では対応出来ないに違いない。
は死んだのだろうか。
若しくは殺してしまったのかも知れない。
老いたお前なんて見たくねェな、
確か自分はそう口走り
老いたあたしなんてあんたに見せたくないわ、
はそう言った。 別に特別な関係だったわけでもなければ何もなかった、
なのにどうして思い出すのかと。









「そこのブラフ野郎!」
「フ、何だ?お喋り女が」

海賊として名を上げた後の事だ、皆が一目置く辺り。
ドフラミンゴにしてもにしても―珍しい女だけの海賊船。
男顔負けの残虐さで名を上げた海賊団。
嘘も大きければ見抜かれない、
吐いた後に真実に変えてしまえばいい。
ドフラミンゴはその場合有限実行を志し
はそもそも嘘なんて吐かなかった。

「いい加減俺の配下に入らねェか、」
「それはこっちの台詞だね」
「美味しい思いさせてやんぜ、なぁ」

ドフラミンゴは贅沢の限りを口走る、
長い腕を広げ嘘を吐き出す。 真っ青なローブを羽織った
ドフラミンゴの船に真正面から堂々と乗り込むし
その隣に自船を横付けしている。
の船からは挑発的な格好をしたクルー達
が男共を挑発していた。




「まぁ座れよ」

ドフラミンゴはそう言い船長室にを招き入れる。
警戒を振り払えない理由は余り面白くないものだ、
は何も言わず部屋へと入った。









俺がお前に生きる糧を与えてやるぜ、
確かそう言われたと思う。
夢だとか希望だとか、そんなモンは要らねェんだよ
必要なのは怒りだ、憎しみだ―
皮膚を切る刃物の感触が忘れられない。

暗い部屋に押し込まれた
壁に背を押し付けながら息を飲んだ、声を殺した。
なぁお前は誰かを憎んじゃいねェんだろ、
誰かをぶっ殺してェなんて思った事もねェんだろ
挙句愛なんてモンを信じてやがる―
どうせこんなモンだ現実は、
ゆっくりと締められる首と対照的に熱を帯びる唇を。
乾いた唇に重なった、は無意識に舌を引いた。
男の舌が遠慮もなしに入り込んできた、少しだけ泣きたくなった。
暗さに慣れた目には真四角の天井だけが映る。
その気もないのに力の抜け切った身体をそのままに
は只天井を見上げていた。
感覚が死んだようになっていたと思う。

「お前が、欲しがってたのはよ、これだぜ」

荒くなった息の中声が聞こえる。
耳側で熱い吐息をかけながら男が呟く。
脚の間を出入りする男の身体も同じだ、
やはり麻痺しているのだろう。

「上も下もねェ、こんなもんだよ」

嘘だと思った。









船長室の装飾は安易に予想出来るようなものだった。
むしろ呆れたと言った方が妥当か。
ネオンが痛い、そうしてとても紫な香りがする。
海の上で空に抱かれ生きる海賊の割りに
ドフラミンゴは太陽を敵視し過ぎている。
ドフラミンゴの目の前というポジションはとても嫌なものだ、
爬虫類を思わせる視線が腹正しい。

「・・・聞いたぜ」
「は?」
「海軍のお偉方と仲がいいらしいじゃねぇか」

小さく吐き出した、ヤメテ。
我ながら驚いた声だった、弱々しく女々しい声だった。

「・・・趣味悪いじゃないか」
「今更か?」
「何度でも言ってやる」

お前は最悪だよドフラミンゴ、
力任せに何でもかんでも上手くいくと思ってる只の馬鹿だ、
はそう呟き目前のグラスを見つめた。
何故ドフラミンゴは自分を招き入れたのだろう。
何もないわけがない。
それならば何故自分はのこのこと招かれたのだろうか。

「恨んでんだろ、
「何を、」
「俺を」

憎んでるか、恨んでるか―
よかったじゃねぇか上手くいってよ、
ドフラミンゴの声が木霊する。
あの時だけだ、あの時ドフラミンゴはを犯した。
あの時だけ、あの一回だけ。あれからは互いに違う道を選んだ。

「けど、なぁ」

オリコウサンなお前の事だ、多分分かってんだろ、
ドフラミンゴはきっと銃を手にする。

「いい趣味じゃない、」

ドフラミンゴはきっと。

「人で遊ぶなんて」

あたしを殺すに違いない、あんた達は逃げな、
船長の言葉をしっかりと信じたクルー達は
銃声の鳴り響く音を海から遠く離れた場所で聞いたと。









「お」

あの雲見てみろよ、
偶々七武海の会合で顔を合わせていた
クロコダイルとドフラミンゴは豪勢なベランダで駄弁る。
真っ青な空は果てなく続き自由を手に入れた錯覚に陥る。

「手前が空なんざ気にするとはな」
「バカヤロウ、俺だって見るぜ」
「女絡みか?おい・・・」
「フ、おっさん、下種だな」

は目を閉じ最期を待った、
まさか俺は出来ねぇ、俺は出来ねぇよ
ドフラミンゴはそう言い泣いた。
まだまだ若かった頃の話だ。

まったくもって意味がわからねえ!
多分クロコダイルとドフラミンゴを
単純に絡ませたかったんだろうね。
じゃあ前半いらないじゃん。