出来るのなら君に殺され

永久の眠りにつきたい






鬼塚は余り喋らないし余り何もしない。
動かないともいえる。


「寝てんのー?」
「いいや、寝てねーよ」


鬼塚の部屋はとてもきれいだ。
それこそ自分の部屋とは比べ物にならないとは思う。
下手をすれば自分専属の家政婦の一人や二人
雇っているのではないかだなんて下種な想像さえ―――――
それはない。
鬼塚は自分のテリトリーに他人が入り込む事を
とても嫌がるのだからそれだけはないだろう。


「ねー今日もーどこにも行かないのー?」
「どこか行きたいのか?」
「んー別にー」


鬼塚が少しだけ笑ったように思う。


「っていうか本当何やってんのー?」
「本読んでる」
「えー何のー?」


勝手に寝転んだ鬼塚のベッドの上、
は天井を見つめたまま鬼塚に何かと話しかけている。
鬼塚のベッドは鬼塚のつけるコロンの香りが染み付いている。
少しだけ酔いそうだと思う。


「本とか読むのー?」
「意外か?」
「ん、へー」
「出来るのなら君に殺され永久の眠りにつきたい」
「は!?」
「こんな台詞言えねェよな」


ハハハと笑った鬼塚はパタリと本を閉じベッドの方を振り向く。
呆気にとられたままのは少しだけ目を大きく開き、
困惑気味な脳内を整理しようと―――――
鬼塚がベッドに乗りを引いた。


再UP
2004/7/8