BUTRECK

言い出す事が出来ず只時を待っていた。
仕事の忙しいクロコダイルは数週間家に戻ってはいないし
だからといって黙ったまま家を出る事は出来ず。
彼はじきに戻ってしまう、
は彼についていなかければならない。


「・・・・・お兄ちゃん、」


きっとクロコダイルは許さないだろう、
彼との関係さえ口にしてはいないのだ。
極力小さくまとめた荷物、
兄からもらったピアスは身につける。
ガタンと音がしドアの開く色が、
は少しだけ息を飲んだ。









最初耳にした時は相当驚いた。
だからそれをに知らせないよう極力頑張ったつもりだ。
ここ数週間はスモーカーの部屋にいた、
のいない部屋はやけに静かすぎる。
今日に限って窓の外では酷い雨が降り続くし
時は明日に迫った。


「・・・・


俺はお前に任せるぜ、
の問題は彼女が解決しなければならない。
それでどんな結果が出ようとも恨み言は言うまい、
スモーカーは窓の外を見つめる。
彼女は今夜眠れないだろう、
だったら自分も寝ないまでだ。









「・・・・・・・何?」
「だから・・・」


が何かを隠している。それは随分前から薄々感じていた。
直接あまり手をかけず少し離れた場所から傍観していたこの妹は
いつしか成長したのだろうか。


「あたし、彼についていくわ」
「おいおい・・・・」


ちょっと待て、まるで話が見えやしねぇ―
苛立ちが募る感触がやけにリアルに感じられ
クロコダイルは目を閉じる。
随分骨を折る仕事がようやく終わり
家に戻れば今度は何が待ち受けた。


「・・・・・・相手は、」


相手の男はどんな野郎だ、
疲れた横顔のままクロコダイルはそう問う。
兄に嘘はつけない。
は意を決し名を呟く―
クロコダイルの視線が変わった。









「出して!!お願いよ!!!」


兄は無言のままだ。
は後悔など一つもしていないと呟きながら涙を零す。
お願いよ最後まで話を聞いてお兄ちゃん―
夜が更ける。
それでは駄目なのに、夜を終わらせてはならない。


「スモーカーの話を・・・・!!」
「聞く気はねぇぜ、
「どうして!!」


どうしても何も海軍の話なんざ聞く気になれねぇな、
ドア越しの会話は始まりすら見せない。
何なら俺との縁を切るって手もあるぜ
吐き棄てるように投げられた言葉、は目を閉じる。


「本当に、」
「あん?」
「本当にそう思ってるの・・・・・?」


あたしはスモーカーが好きなの、
家族もお兄ちゃんしかいないのよ、
それは自分も同じだとクロコダイルは思う。


「ああ、」


もう話は終わりだ、これ以上続ける気にもなれねぇ―
遠ざかるクロコダイルの足音を聞いていた。









「・・・
「何?スモーカー」


無理をしているのが痛々しいほど分かりスモーカーは視線を泳がせる。
案の定交渉は決裂、火を見るより明らかな結果だ。
泣きはらした目を隠したサングラスはいつ取れるのだろう。


「お前、」


本当にいいのか、
念押しのようにスモーカーが問えどもは頷くだけだ。
別にいいのよ全然構わない、
もう時間はないんでしょうスモーカー、
きっとがここを早く離れたいのだろう、
理由が分かる分尚更居た堪れない。


「お前の、兄さんは・・・・・」
「船が出ちゃうわよ」
「なあ


クロコダイルが前面に出て来て尚反対するのならば
スモーカーにも打つ手があった。
しかし。は何も語らないし
そこに踏み入るには少しだけ距離が遠過ぎる。


「スモーカー・・・・・」
「何だ?」
「ごめんなさい、」


まったく説得出来なかったわ、
スモーカーの事誤解させたままで、
はスモーカーの胸元に額をつけそう呟く。
そんな事気にするんじゃねぇ、
お前は悪くない、スモーカーは遥か彼方水平線を見つめる。


「けどな、」


お前にとっちゃ唯一の家族だろうが、
俺は待てるかも知れねぇぜ、
スモーカーの言葉だけがやけに響いていた。









家を棄てたと思った妹は家にいた。
クロコダイルは怪訝そうな表情でを見下ろす。


「男と出て行ったんじゃねぇのか?」
「話を聞いてもらえるまでここにいるわ」
「フン、なら死ぬまでか?」
「お兄ちゃん、」


絶対にスモーカーと結婚するの、
その時にはお兄ちゃんにも
祝福してもらいたいと思ってるわ、
はクロコダイルの腕を掴み一度強く微笑む。


「もう他所に女の一人くらい作ってやがるぜ、」
「スモーカーはそんな事しないわ」
「さぁな、」
「・・・・じゃあ同居は?」
「却下だ」
「どうしたらいいのよ!」
「忘れちまえ」
「ちょっとお兄ちゃん!?」




が無理矢理クロコダイルを スモーカーと引き合わせるまで後二日。

昔のサイトのキリリクだったと思うんですが、
ものすごい設定だといまさら思ったわけで。
どんなだ。見つけて笑ったわ。