LADY,BABY,GUY

痛む頭を押さえながらスパイクが目覚めれば
当たり前のようにの姿はなく、
そんな現状を甘んじて受け入れながらも激しい吐き気に襲われる。
あの女は一体どこに行こうというのだろう、
行くあてすらない状況なのに一定の場所に留まる事も出来ず
身体を休める間もなく今日も又飛び去った。


「具合が、悪ぃ・・・」


こりゃ飲みすぎだな、
誰に言うわけでもなく返答を待つわけでもない。
只スパイクはそう呟きトイレを出る。
流星の最中遠くで一際光った何か、眼差しが嫌に歪んだ。











「・・・・あんた何やってるの?」
「俺かい?俺は―さぁな、何やってんだか・・・」
「そこ、どけてくれない?邪魔だわ」
「!そりゃ、申し訳ない」


立った男は想像以上に大きくは男を見上げた。
酷く気だるそうに笑むその男、
元々はくの部屋入り口前に座り込んでいる事がおかしい。
もしや強盗か―
それならそれでそう珍しいものではない。
この星は一度死んだ星だ、
それなのに人々はどこからともなく集結し再度生活を始めた。
新たに創り出す事はせず
只ダラダラと過ごす事のみを目的として再生されたこの星、
は丁度半年前にここへと。


「・・・・背後に立たないで―」
「ちょっと、ごめんよ」
「何・・・・!?」


鍵が足元に落ちた。
は振り返ろうとするがその背を男に押され室内に雪崩れ込む。
咄嗟にデリンジャーを手にしたく
男の体重を支えるはめになりそのまま崩れ落ちた。
図体の大きなこの男、
床に伏したくは身体を起こそうともがくが起こせず―
まったく何がどうなっているのだろう。
右手に構えた銃も起こす事が出来ず引き金にかけた指先すら動きはしない。


「あんた何なの・・・!?」
「今はタイミングが、悪いな」
「は・・・」


開きっぱなしのドアの向こう側、
黒服の男達の乗ったリムジンとその奥には警察が―
マズイ、くは男から逃げ出そうと。
もしかしたらこの男も一味かも知れない、
今こんな場所で捕まるわけにはいかないというのに。


「人気者だな、」
「はっ、あんた何―」
「でも俺が先だ」


あんた、まさか―あんたまさか賞金稼ぎ?
男はくの手を取り笑う、ご名答、
あんまりにもあっさり捕まってしまったものだから
酷い脱力感が襲い掛かりくはそのまま項垂れた。











「あ〜ら、朝帰り?色男は違うわね〜〜」
「うるせぇな、そうだよ」


ビバップに戻れば早々フェイに見つかり
スパイクは面倒くさそうに顔を背けた。
こうなればくは優に一月は戻らないのだろうし
わざわざ迎えに出向く関係でもない。

は言った、何でもするから今だけは見逃して。
スパイクは答えた、それは出来ない約束だ。
は言った、やらなきゃなんない事があるのよ、
あたしの賞金分の金なら月払いで支払ってあげるわ―
おいおいマジかよ。
その日からスパイクはくのヒモになった。


「あら、あんた最近入りいいわね」
「・・・くれてやるからどっか行け」
「何よその言い方!でも、まぁくれるっていうの蹴る事ないわよね〜」
「・・・ったく、」


好きにしろ、どいつもこいつも―勝手な真似ばっかりしやがる。
ソファーに飛び込んだスパイクはタバコを取り出すが
その銘柄が自分のものではなくくのものだった為尚更打ちひしがれる。
そうだった、丁度切れたから
の買い置きしていたタバコを一つ頂戴していた。


「あら?あんたタバコ代えたの?」
「あ?」
「はっはぁ〜ん・・・さては例の女の・・・」
「うるせぇんだよ!」


ケタケタと笑いながらフェイは立ち去る、
手中で形を崩したボックスは誰のものなのだろう。


「・・・クソッ、」


段々堕ちてくだけじゃねェか。
が無事戻る確証などない、
金は要らないというスパイクの要請すらくは聞かず
月の初めには必ず指定された金額が気づかない内に
ジャケットの内側辺りに忍ばせてある。
これは、これはまるで―これではまるでまるで。
まるで遣り切れない。


「お、これで食費が助かるな」
「好きに使えばいいだろ!」
「な〜に怒ってんだ?お前・・・」
「何でもねェよ!」


只今だけは心底願った、帰って来てくれ、
だだっ広いこの宇宙の中そんな願いは屑星同然だというのに。

昔のヤツですね。
ビバップをUPし忘れていたという体たらく振り。