チャッカァ

「そこから一歩でも動いたら殺すからね」
「そんな。また物騒な」
「動くなっつったでしょ、あんた本当に人の話聞かないのね」
「今更やないの」


斬魄刀を床に突き刺し片膝を立てたままの状態を
どれくらい続けているのだろう。
まるで気の抜けない状態は酷く疲れる。
そもそも昨晩から激務続きなのだ
(それもこれも全てこの男のせいなのだが)
即座に眠りにつける事請け合い―
今ならのびた君にも勝てるだろう。


「お肌、荒れるでェ?」
「余計なお世話」
「あかん、あかんって。その歳で肌荒れは・・・」
「はぁ!?」
「そんな、若くないんやから」


何故こんな事になってしまっているのだろう―
先ほどから憎まれ口オンリーのこの男、市丸ギンを見ながら
は幾度目かの溜息を吐き出した。














事の始まりはこのバカ(失礼)が
夜の見回りにを強制連行した、それだ。
何のついでか分からないが同席していたお優しい藍染隊長は
女の子に夜の見回りはさせられないよ、そんな事を言っていたが
(それはそれで某大学の女性教授並に
曲がったフェミニスト思考を持っているにしてみれば
腹正しい事この上なかったのだが)
こんな時だけお偉い口を利いたギンはの部屋へと参り
そのままは連行された。


『その時現場に偶然居合わせた方々の証言をどうぞ』


乱菊「吃驚しましたよねェ?だって物凄い音させてさぁ」
日番谷「の叫び声も凄かったじゃねーか」
乱菊「よかったわよ、あたし達が居合わせて」
日番谷「市丸も性質が悪ぃよな」
乱菊「苛めて愉しんでるんですよ、あのバカ」


は斬魄刀を片手に逃走、襖は破壊される。
そんなを見上げたギンは乱菊と日番谷の存在に気づくと
困った奴だ、だとか何だとか口走りながらを追った。
は寝巻きのままだ。


『その時現場に偶然居合わせた方々の証言をどうぞ』


恋次「つか俺、顔踏まれたんだけどな」
イズル「凄かったよね。
恋次「ありえねーだろ・・・」
イズル「君の顔もね・・・」


恋次の顔を踏みもう一段高く飛びあがったは天高く舞った。













結局ギンに捕まったはそのまま見回りに引きずり回され
その結果落とし穴に嵌っています―


「誰が、一体、何の為にこんなモン作ったってのよ!!」
「さあ?」
「あんたが犯人だったら今この場で瞬殺だからね」
「そんなわけ―」
「殺れ。『舞梦』」
「ちょっ、ちょお待ち!!」


間髪入れないの行動にギンが口を開く。
の斬魄刀、その能力を見た人間は未だおらず―
何が起こるか分かったものではない。
やたら光る能力に目をつけた藍染が
このを三番隊に入れたのはいいが
我の強いの気性を見て取ったのだろう。


「実はお話があったんよ」
「話?」
「いっつも、君はボクと話せんやろ?」
「そう?」
「むしろ君はボクの事、隊長や思てないやろ・・・」
「そう」


慇懃無礼とはこの事だ―
一応は隊長であるギンに対し敬語はおろか大変失礼な口の利き方を。
ギンは幾らでも青筋をたてイズルはその度に胃を痛める。
の素性は明らかにされていない。
どうやら更木同様入隊試験を受けずに入隊しているらしい。


「話なんてないよ」
「何?」
「あたしあんたの事嫌いだもん」
「・・・(このクソ女ほんま犯して捨てたろか)」
「まったく・・・あの人の言った通り」
「え?」
「どいつもこいつも胡散臭い顔してやがる」


そう言いにやりと笑ったは斬魄刀を地に深く突きたて姿を消した。













「市丸隊長・・・」
「イズルやないの」
「何、してるんですか?」
「ちょお、助けてや」


翌朝イズルにより救出されたギンは
欠伸をしながら歩いているを目にする。
一瞥をくれたは声もかけずに歩き去った。


「ずっと一人だったんですか?」
「そ」
「あそこに・・・?」
「だまり」


判別不可、脅威になりうる恐れ有―
藍染に送る資料にはそう書かざるを得ない。

これも古いギン話。何をしたかったのか