愚鈍な貪欲さが身を焦がす

とても辛辣な意見を口にしたつもり等毛頭なく
ただ単に客観的事実を述べたまでだ。
お前馬鹿じゃねェの、それが赤星の意見。
は少しだけむっとした表情を浮かべたが何も言わなかった。
何も言わなかったという事はきっと自分でも分かっているという事だと。
は自分でも気づいている、一つだけ気づいていない。


「あ〜マジ、ウゼェ」


馬鹿、マジで馬鹿。
まったく間抜けなの馬鹿らしさが
今にも空気感染しそうで赤星は目を閉じた。













他の誰かをずっと好きなの事は
それこそ誰よりもずっとずっと、それこそ何年単位で知っている。
だからそんなに対し特別な感情は芽生えなかった。
握りつぶした、根こそぎ奪い去った。
迷いだとでも思えばいい、よくある事だ。
高校に入り途端化粧が変わったり女くさくなったり、
必死に足掻いている姿はお世辞にも美しくなくむしろ滑稽だ。
そうしてそんな滑稽な姿に騙される輩のなんと多い事よ。
みんな馬鹿ばっかだぜ、正直、見下すわけではない。


「お。お前何やってんだよ」
「・・・・別に、」


何もないっスよ。
愛想がなく可愛げもないのは今更であり
たまたま校舎裏で鉢合わせた岡田に対しても変わらない。
タバコを止めた二人がこんな場所で何をしているのだろう。
普段でもあまり話はしないご対面。
不思議と岡田はそのまま赤星の隣に座り缶コーヒーを開けた。


「・・・何スか」
「別に」
「・・・・」
「今日天気いいよな」


暑苦しそうなドレッドの下やけに醒めた岡田の横顔が存在し
赤星は一度だけ地面を見つめる。
岡田は悪い人間ではない、だからもきっと。
だから岡田はを。
の思いは毎度から周り、絶対に通じない。


「さっきさ、」
ちゃん泣いてたんだよな。
晴天の下岡田の声が透き通った。
何を言いたいのかは分からない、嘘だ余りにも明白だ。
畜生、当たり所のない悔しさが身を包む。
この人は何でそんなに、野球が酷く恋しい。


「あいつよく泣くんスよ、スゲエ泣き虫、昔っから」
「マジで?」
「ガキなんスよ、思い通りに行かなきゃすぐ泣く」
「はは、」


だから別にこんな事は岡田に言わなくてもいい話のはずだ。


「あのよぉ赤星、お前・・・」
「あ」
「?」


ヤベェ用事思い出した。
まったく白々しい台詞を吐き出し赤星は慌しく立ち上がる。
スンマセンちっと用事思い出したんで、じゃ。
やたらと大きな赤星の背だけを見送った岡田は
大して美味くもない缶コーヒーを又一口含む。
口の中に広がる甘ったるい液体、
既に冷えはなくなり温さばかりを増す。
温さばかりを増す。
温さばかりを増す。

個人的に赤星が一番好きでした。我侭で。