とりわけ無粋な僕ら

よく分からない事をいう奴に出会い頭思い切り殴られ
赤星はそれでなくとも苛々しているというのに挙句の合わせ技だと思う。
俺今機嫌悪ぃよ。
一度殴られた後そう言った赤星は相手を思い切り殴りつけた。
これもまた珍しい出来事、いつもはサラリと避けきれる赤星が
普通に殴られたのがそもそもの間違いだったのかも知れない。
昨日からずっとの機嫌が悪い。
原因が自分だったらどうしようと思ったが多分自分だ。













「あれ〜〜ちゃん?」
「珍し、一人?」


屋上で一人タバコを吸っていた
突然かけられた声に一瞬むせる。
恐る恐る振り向けば相変わらず優しげに笑う岡田と桧山がいた。
コラタバコなんか吸ってんじゃねぇ。
大袈裟にそう言う桧山はの頭を小突きはそんな桧山から逃げる。
タバコをくわえたままのの姿は冬空に栄え
つい最近までは白っぽい茶色だった髪が目を見張るほど黒くなっている事が
それに拍車をかけているのかと思えた。
緩い線を描いている髪は少しだけ大人らしさを増殖させている。


「まだ隠れて吸ってんのかよ」
「あたし禁煙するなんて言ってないですもん」
「女の子は吸わない方がいいよ」
「や〜関係ないですって!」


苦笑いしたはそう言い
(桧山には言えるが岡田には余り言えない)
困ったようにしゃがみ込んだ。
赤星がそれこそ口うるさく言うのだ。
ヤニ臭ぇお前又タバコ吸ったろ。
吸わない人間にはどうしても匂いがばれてしまう。
ああもうキスしないから、逆切れ気味にそう言えども同じだ。
最近の赤星はがタバコを吸っているか吸っていないかを
判断する為にキスをしているような節がある。
昨日もそれで喧嘩した。
お前又タバコ吸ったろ、何だか限界だった。


「先輩達もう吸ってないんですよね」
「ま〜な」
「止めれました?」
「止める気あんのかよ、お前」
「ん〜〜〜〜」


止めてもいいって思うんですけど、
五月蝿いから何かもう嫌なんです。
桧山は分かっていないが岡田は何気に分かっている。
むしろ嫌な偶然に見舞われたという事か。
ちなみにやはりというか新庄もそこに居合わせた。













丁度部室に忘れ物をした事に気づいた岡田が
駅から部室へと引き返している途中新庄に出会い、
(彼は自主練をしていたらしい、にくい男だ)
付き合いのいい新庄は岡田に付き合い共に部室へと向かった。
誰もいない学校は暗く時間帯的にも生徒が残っているわけがない。
職員室だけに明かりがついていた。
息も白く目立つ寒さだ。
携帯忘れるなんて俺も馬鹿だよな、岡田が部室へと急ぐ。


「ふっざけんじゃないわよ!!」
「俺じゃねーしお前さぁ!!」
「大体あんたあたしがタバコ吸ってんの知ってたでしょ!?」
「止めろつったろ」
「止める気ないって言ったでしょ!?」

「「あ〜〜〜ムカつく!!」」


部室に明かりが点いていた、二つの影が揺れていた。
咄嗟に何故か隠れてしまった岡田と新庄は
一部始終を見守ってしまう事になる。
何だかんだと言い合いをしていると赤星(公認)、
先にドアを開け飛び出したのはだ。
は赤星を振り返りもせず駆け出し赤星はおい、
だとか叫んでいたものの積極的に追いかける姿勢は見せない。
只やり切れなさそうに壁を蹴った、振り返った、目が合った。


「・・・よ、お」
「何、やってんスか」
「いや、忘れ物・・・・」
「・・・・・・・・」


気まずい雰囲気とはああいう事をいうのだろうと心底実感した。
お疲れさん、そう発し場を切った赤星はそそくさと帰ってしまった。













は今日一日屋上にいるつもりらしい、寒いのに。
要は赤星に会いたくないだけだろうが
そのスカートでは簡単に風邪をひくに違いない。
学ランとは違うだろう、岡田と桧山は屋上でそんなの話を聞く。
まあどんな二人でも万事仲がいいわけではないだろう、
赤星はどこにいるのだろうか。


「そういえばさっき安仁屋センパイに会いましたよ」
「安仁屋?」
「あたしがここにいるって分かったら行っちゃいましたけど」
「・・・・女連れ?」


は何だかんだとつまらない話を持ち出し気を紛らわせている、
赤星の言い分も分かるの言い分も分かる。
分かる分だけ言いようがない。
そうして直に岡田と桧山も姿を消しは又一人ぼっちだ。
一人ぼっちで延々考え込む、又吸殻が増え続ける。
最終的に赤星は重い腰を上げようやく屋上に来るのだろうし
もそれを待っている。
タバコを止める事は出来ないと我ながら思う
又その局面をどう誤魔化そうかと。そんな事を考えていた。

吸わないにこした事はないだろうと思うよ。
しかしやめられない。