HAPPY MARRY-ME

お願いよ、何でもするから。
女はひれ伏し願い請うた。
何でもするから―
女、その言葉に二言はないな、
悠然と佇む神は気紛れにそう答え
女は少しだけ自身の発言を後悔したが
既に遅い。




婚姻の儀式は国により異なる、
無論この神にそんな定説など通用するはずもなく
震える手を強く掴んだ
これから起こるであろう事態を予測した。
今までに見た試しのないほど豪勢な装飾を、
真白の衣服はどこのものだろう、
兎に角どこかの国の正装に違いない。
突如現れたこの神の出生など誰も知りはしないし
大した意味などないのだろう。
この盛大な宴を催す神は部下を顎で使っている、
はここ数日の間この部屋に軟禁状態だ。


「・・・・ブラハム」


互いにとは言わないが
片方は間違いなく憎んでいたに違いない、
それなのに出会ってしまった。
彼はシャンディアの戦士、居場所が違うわ、
そんな事は言われずとも分かっている。
ガン・フォールにつき話し合い(名ばかりのものだったが)に
同席していたはそこで憎しみの深さを知り
ブラハムに出会う。
荒れ狂うワイパーの隣無言を貫くブラハムは
聊か異質な感じがした。


「・・・・・・・」


話し合いとかこつけは頻繁に姿を見せるようになった、
最初はまるで無視をしていたシャンディアの人間も
最後には呆れていたのだろう、
まるで敵意のないに毒気を抜かれたのかも知れない。
まるで世間知らず、
のうのうと過ごしてきたに違いない
よくも悪くも無知であり
シャンディアとスカイピアとの因縁をようやく知り得る。


「・・・・・!!」
「くだらん事を、」
「あ・・・・・」
「不備でもあるか?」
「いえ・・・」


素晴らしいお召し物を着ここへ飛び込んだ。
もう戻る術もなし逃れる術もない。




「ふざけ・・・・・!!!!」
「ブラハム!!」
「・・・・・・・・・!!!」
「・・・・・・・!!!」


スカイピアの方角
アッパーヤードが湧き上がっている、
原因はたった一つ。
唯一神が番を迎える前夜祭だ。
宴はここ数日連続で行われている、
ブラハムが事情を知ったのは今朝方の事だ。
こんな状態に陥るよりは
あのままを憎んでいた方が幾らかでもマシだった、
真実を得た今なす術は一つもないというのに。


「今あんたが出て行っても一緒よ!!」
「今行かねぇでいつ行く!?」
「それは・・・・・・・・!!」


あの冷静なブラハムが我を忘れている、
ワイパーは黙したまま口を開かず
カマキリはブラハムを背後から押さえつけた。
必死にブラハムを引き止めていたラキは
きつく奥歯を噛み締め
それでもブラハムの辛さ等一つとして
和らげる事が出来ない事実に苦しんだ。
一番奥のテントの中には
全てを知る幼子が一人泣いている、
あんなに幼い子ですら理解出来るのだと、
ああそうだあの子供を慰めにも行かなければならない。


「クソが・・・・・!!」


恐らくブラハム自身よく分かっている事だろう、
全てが捻じ曲がってしまっている。
最初からに出会わなければよかったのかも知れない、
の来訪を最後まで拒んでいたワイパーは
その辺りの複雑さをよく知っていたのか。
ありゃマズイ、すぐ止めさせろ、
何かとそう口にしていたワイパーの目測通り
とワイパーは恋仲になった、
ワイパーはそれを一番恐れていたというのに。
絶対幸せにゃなれねぇ
そもそも今の俺達にそんな暇はねぇだろうが、
リーダーはリーダーなりに苦しんでいた様子だ。


「エネル・・・・・・・・!!!」


憎むべき敵の名は骨の髄に染み込む、
ブラハムを殴りつけたワイパーは
無言のままテント内へと立ち去り
殴られようやく目の醒めたらしいブラハムは
力なく天を仰いだ。




シャンディアの子供の相手をしていた
子供の他愛もないおふざけに巻き込まれる、
大丈夫ここならエネルにも聞こえないから、
子供はそう言いエネルに対する不祥を働いた。
駄目よここは―
慌てたが子の口を塞いだのも束の間
雷鳴が―
轟かない。
の背越しに
何かを見つけた子供は酷く怯えており
はゆっくりと振り返る。


「・・・・・呼んだか?私の事を、」
「・・・・・!!」


この気紛れな神が果たして何をしていたのかは分からない、
只今と子供の目前に神は降臨したのだ。
逃げたところで同じ事、
この神に至っては距離すら意味を持たない。
は子をきつく抱き締めエネルを見上げる。


「うん?お前確か―」
「あ・・・・・・・」
「先代の気に入りだったな、」


覚えているぞ、
神が近づく。
子供は手の中で酷く震えており
はなす術もない、
子は震えているというのに。
エネルはに言った、
その子供を差し出せ、
どうして、
は問う。
ほう貴様神に問い返すか、
エネルはそう言いながらも答えた。


「え・・・・・?」
「奴等への見せしめにもなろう、」


その子を殺せば、
ああ子供が震えている。
喉は酷く渇いているがは言葉を発した、
お願いよ何でもするからこの子を許して、
神から目が離せない。
の言葉を受けても
エネルは反応一つ返さず、
は幾度も願い請うた。


「・・・・・・・・女、」


幾度目だろう、
突如神は口を開きは視線を上げる。
女、その言葉に二言はないな―
何に生気を奪われたのかは分からない
しいて上げるならば神の後光にか。
は短く頷く。
その刹那子はの腕から離れ
の身体は宙に浮きそうして。


!!!」
「逃げなさい!!早く!!」


エネルに抱えられた
足元の子にそう叫び今に至る。




「婚姻の儀式を―」


エネルに強く肩を抱かれは初めて人前へ、
神を祝福する皆が一様にを見る。
シャンディアの方向はどこだろう、
場違いにもがそんな事を考えれば
又どこかで落雷が起きた。

ブラハム夢て・・・!
長いしな!