Swim

は言った。
確かにあの時言った―――――
多分だったっけ、サンジはそう思う。
丁度自分達を裏切る手前、少しだけの空虚の時間帯。
今思えば何かに急かされていたのかも知れないし
それはサンジの気のせいなのかも知れない。
それでもは。


彼女が海軍の人間だという事に気づいたのはロビンだった。
そうして青キジと知り合いだという事も―――――
単なる知り合いではないのかも知れない。
色んな事情があるのかとさえ。
夜の甲板での彼女達の会話を耳にしてしまった。
聞かなければよかった。


「あたしの命ならくれてあげるわよ」
「いらないわぁ・・・そんなの」
「何が目的なの」
「目的?」


普段は伏し目がちなの眼差しがロビンを射抜いた。
ああ、サンジは思う。
ああ、サンジは慟哭さえ覚える。
月を間近に写したの眼差しはこんなにも鋭いのか。
臆病な相手ならば足さえ竦み動けなくなるだろう。
現にそう臆病ではないはずのサンジの足は動けなくなってしまっている。


「あたしは・・・ねぇ?目的、なんて」

「青キジに頼まれただけだし、」


そもそも頼まれたっていうか一方的に告げられたっていうか。
は何だかんだと物々呟いているし
ロビンはそんなに対し苛立ちを隠せないようだ。
波がざわめく。
殺気が。
どちらの。
床から幾重もの腕が伸びその刹那の身体が浮く。


そうだ。確かには浮いた。座ったままの姿勢で。
目標を見失った腕は更に伸びる、
の腕がロビンの首に指をかけた。
逆さまの状態で。重力等完璧に無視した状態で。
何も持っていないはずのの指先が
ロビンに触れればロビンの肌が切れた。
血が落ちる。


「けどあたしさぁ」


今まで生きてきて誰かの言う事なんて聞いた例ないのよね。
が笑う。
今度ははっきりと見えた。の眼にうつる影を。
は俺を見てたんだ、ふと気づく。
は誰も見ていない様子で全てを見ていた。
仮にそれが青キジに向けての映像作品だとしてもだ。


「まぁだいいじゃない。楽しいんでしょう?今、あんた」
「壊させないわ」
「壊しゃしないわよ」
「信じられないわ」
「信じなくてもいいわ」


信用出来ないのはあんたも一緒。
はロビンを指差し笑う。
口惜しそうにロビンが唇を噛み締めた。
そうして同じ表情をサンジは再度目の当たりにしている。
は海軍のお題目、正義を振り翳すのだろうか。

再UP。 酷い女…!
というか、サンジってかロビン夢?