闇に誘う

シャンクスが怒る理由といったら余りレパートリーはない。
ずっと分かっていた、こうすればシャンクスはとても簡単に怒るだろう、だから。
あたしが言ってる事って本当の事ばっかよ、ねえシャンクス。
決して彼が認める事等ないのだから尚更躍起になったのだろう、そう思う。
シャンクスがキスをした、は何となく抵抗をしてみせた。
笑いながらシャンクスの手がの腕を掴み
そのまま身体を押さえ込んだ、少しだけ怒っていると感じた。
何気なく顔を逸らせば溜息と共に唇が落ちてきた、
だからはもう一度最後の抵抗を見せた。
有無を言わさず口付けられた。









外堀を埋めもせずそのまま破壊してしまう
シャンクスの行動は些か常軌を逸していると思う。
そんな彼の行動にケチをつける事が出来るのは
今のところだけだ。
俺の事愛しな
押し付けがましい愛の言葉に幾ら騙され続けたのだろう。
もう騙されないわ、もういいのよシャンクス。
息が苦しく感じられたからか。
少しだけでも一人でいさせてよ、今はあんたの顔も見たくない。
の言い分が通るわけもない。


「裏切んなよ、
「そんなんじゃ、」
「俺を裏切んじゃねェよ


絶対に、だ。
シャンクスの目を見る事が出来なかったのは何も怖かったからではない。
シャンクスを裏切る人間なんて存在するのだろうか。
は一人そんな事を考えていた。
最初から信じていなければ、何がここまで彼を信用させるのだろう。
あたしは最初からあんたの事なんて、信用は得意な分野ではない。


「・・・あんたは、」


あんたはどうなのよ、あんたはあたしを裏切らないって言い切れるの。
の問いにシャンクスは只何となく頷きチラリと横目で答えを返す。
俺はいつだって信用していつだって裏切られてんだぜ。
そう聞こえた気がする。
女なんてのはその極地だ、絶対に裏切りやがるだから俺は。
その続きを耳にしたくなくは蹲った。


まるで子供の言い分だが道理は通っているような気がする。
シャンクスは単に裏切るなと言っているだけだし、
ならば裏切らなければいいだけの話だ。
何だかんだと言いながらもきっとシャンクスを愛している。
恐ろしさから逃れる為に深酒に溺れていればベンが隣にいた。
は視線も寄越さずグラスを増やす。


「・・・あんた達は」


一緒にいるべきじゃねェんだよ、けどもう遅ェ。
それから先は似ているだとか大概我侭過ぎるだとか
聞きなれた言葉ばかりが乱立していたように思える。
一緒にいるべきではない、それは確かにそうなのかも知れない。
大体にして恐れを抱くなんてのは愚の骨頂なわけで、
だからシャンクスは、だからあたしは。
頭の中で色んな映像が回っては消えた。

再UP。 重い痴話喧嘩…