熱射病

シャンクスの存在する部屋は総じて散らかっている。
飲みかけのボトルや食い散らかした残骸、
その中に自身も含まれるのか否か。
散らかす行為はやたらと得意のようで少しだけ辟易とした。
心ここにあらず状態の男のそばにいるという事はとてもストレスが溜まる。


「・・・何」
「ん、」
「何考えてんのよ、」


そんで何見てるの。
ぼんやりとベッドの上で
胡坐をかいているシャンクスには言葉を投げる。
投げられた言葉は返される事もなくそのまま放置だ。
そもそも何を考えているのかは分からない。


「まだ足りねェか」
「全然、」
「欲しがる女は嫌いじゃねェぜ、」


キライじゃない、只それだけだとは思った。









気持ちを落ち着かせる為だけだとか
の機嫌を伺うだけだとか。
恐らくはそういうものの為に
シャンクスの言葉は存在する。
気持ちを表す為のものではなく現状を伝える為のものでもない。
最近になってようやく気づいた、シャンクスはきっと。
分からない。
今まで気づかないようスルーしていただけなのかも知れない。
本当は最初から気づいていたのかも知れないし
誤魔化せる事ならばこれから先もそうしていたかった。
気づかなければ今までどおり上手に事は回る。


「・・・よく理解出来ねェんだが」
こりゃ何だ、俺のせいか?
シャンクスが自嘲気味に笑った。


「怒る?」
「・・・いいや」
「じゃあ、どうする?」
「さぁな、」


どうもしねェし何も思わねェ、普段通りさ何も変わらねェ。
薄く笑うシャンクスには動じるなんて事は決してないのだろうし、
だから目前でが女を殺しても
平然とした様子でソファーに座り込むのだ。
見知らぬ女ではない、最近シャンクスが可愛がっていた女だった。
の気を狂わせる女だった。可愛い、甘え上手な女だった。


「後から片させねェとな」
「・・・・・」
「それとも部屋、代えちまうか」


シャンクスの中身はまるで見当がつかず果てしなく深い。
表面だけで愛している等と囁きあう関係に飽きていただけだ。
シャンクスに限りそれは絶対にないから。
後一歩踏み出せば理想郷に辿り着けるのかも知れない。
その一歩はどうやら踏み出せそうにもない。


「・・・どうした?」


顔色が悪ぃんじゃねェか
気遣うシャンクスの声が妙に優しい。


「どうも、」
「どうした?」
「どうもないわ、」


血まみれのまま立ち尽くした
そっと抱き締めたシャンクスからは
安い酒とタバコの匂いがした。

再UP。
嫉妬さえも凌駕する男、シャンクス。
そうしてはた迷惑な主人公