RED

「・・・よぉ」


くたびれきった身体を引きずったまま
馴染みの酒場に顔を出せばの顔を見る羽目になる。
そういえばここ最近来ていなかった理由はあの女だというのに
疲れがたまりすぎ忘れてしまっていたのだろうか。
ヒナよりも気が強くもっと手に負えない女。


「相変わらずしけた面してるわね」
「ご挨拶じゃねェか、おい」
「辛気臭いわ」


そりゃお前の方が。
余計な口を挟みそうでスモーカーは口を閉じる。
毎日がとても楽しくなさそうで不満ばかりがたまっているような
の横顔を眺めながら隣に座れば
暑苦しい、葉巻がくさい、
どれだけでも言葉を頂戴出来た。









子供は相手にしない、大人は馬鹿にする。
という女はそういう生き物だと認識している。


「口が悪ぃ」
「今更じゃない」
「可哀想な女じゃねェか、なぁマスター」
「フン」


この女をおとしてみようか。


「随分ご無沙汰なんじゃねェのか?」
「余計なお世話よ馬鹿」
「俺がやってやろうか」
「あんたが?」


冗談じゃない、は笑う。
あんたにやらせるくらいならそこらの犬とでもやるわよ。
最早気も立たない。


「あんた、おっさんになっちゃったわね」
「他人の事は言えねェだろうが」
「失礼ね」


この女をおとしてみようか。


「最近どうなのよ、海軍の方は」
「どうもこうもな・・・」
「あんた出世出来ないでしょうね」
「それこそ余計なお世話だぜ」


この女をおとしてみようか、そう思って早幾年。
おとしてみせるだなんて豪語していたあの頃がとても懐かしい。
まったく進歩も見られないまま二人だけが残ってしまった、それだけだ。

再UP。
何かこういう普通の会話って好きで…