THAT’S ALL RIGHT

ここへは誰も来ない。
来ない、という言い方はきっと適切ではない。
誰もがここにこんな思いを抱いて
立ち尽くしている事実など知らないのだし
この場所の名さえ知らないのだ。
来る術もないし理由もない。
だからそんな恐れ多い希望を抱くのは無意味だし馬鹿げてさえいる。
ここは雨が止まない。誰もここへは来ない。
お願いだから誰か来て。そんな事思わない。嘘だ。
嘘でもどちらでも別に。
只一つだけいえるのは四面楚歌なのだろうと。
今更でもある。
湿気が肌を濡らしは雨具さえもちはしない。
涙は不思議と出ずそんな己にさえがっかりだ。
そういえば泣きたかったのかも知れない。
誰にも伝えない。
馬鹿馬鹿しいから、惨めでもあるしやはり馬鹿馬鹿しい。
泣きたい気持ちのストックを沢山集めそれをいつ発散しようか。
あの男は嘘でも構いはしないと口走った、問題はないと。
はそれは違うと思った。嘘だけは吐くなよ。
そもそもあの男はを一切疑わず
それすら振りだったのだろうか。
ドフラミンゴは沢山の嘘と虚栄に塗れ生きていた。
は泣いた。


「・・・だって、」


あんただって演じてた、あたしだってそりゃあ。
愛の模造品を与えられたような気がしている。
そんなものを愛せる道理はない、愛した振りをしていた。
きっとそれがあんまりにもチープだったからメッキが剥がれた。
それを赦せなかったあの男の心なんて
にはまったく分からない。何て我侭な男だ。


「だって、」


それでも信じられると思っていたあの男と
それでは到底信じられないと思っていた自分。
どちらが果たして正しいのかは判らず
そもそも正しさなんて存在しない二人の関係だ。
途中から二人とも後悔していた、ほんの少しだけ。
口には出さなかった、気付いている事さえ微塵も。


「ばかやろう」


ここは雨が止まない。誰一人迎えに来る事もない。
こんな狭い部屋の中、雨水だけが膝を浸した。

再UP。
ドフラミンゴでここまで暗いのない気がする