ドラマチックメロウ

<新しい年を迎えたあなたに最高の贈り物を届けます>


年末から新年にかけ当たり前のように
家をあけていたドフラミンゴは、
大きなゴチック仕様の玄関に貼られた
一枚の紙を手に取り口元を歪めた。
蔦のような細い文字に覚えがあった。
だ。
まったく懐かしいなおい。
早朝のこんな時間帯鳥達が鳴いている。


『ドフラミンゴ』


気紛れ風の中あの懐かしい声が名を呼んだような気がし、
ドフラミンゴは辺りを見回す。
少しだけハスキーで時折舌ったらずになるあの口調、
目を閉じれば映像が鮮明に蘇った。
セピア色の映像がきっと思い出ならば
それは懐かしいのだろうか。
手触りから匂いまで余りにも鮮やかに蘇るものだから
今と過去が錯覚を覚えそうだ。


「まぁだ覚えてやがるぜ・・・・・」


この手が。
ドフラミンゴは自身の手の平を見つめながら呟く。
胸騒ぎが起きていた。









「どうしたの?
「ん?何も」
「さっきから何やってるの?」
「これ?」


は顔を上げナミを見つめる。
の手には大きなハサミが。
はずっとそれで何かを切っている。
昨日の戦闘で怪我をしたは、
今日一日絶対安静を言いつけられており、
珍しく一日中船内に留まる事となった。
何かを探しているらしい、それが何なのかは分からない。
はふらりと独りどこかへ消え戦闘を繰り返してくる。


「切ってるの」
「えっ?」
「時折こうしてなきゃさ」


あいつに捕まっちゃうからね。
当たり前の事をやっているようなその言い方に
ナミは言葉を失い黙り込む。
おかしい事だという事は百も承知だ、
は時折理解出来ない行動を行う。
その行動にはきっと意味があるのだろう、
しかしその理由を得る事は出来ない。


「ねぇ


あんたって本当変わってるわ。
ナミはそう言い笑う。
ハサミをかしゃかしゃと動かした
大きく腕を伸ばしピースマークをつくった。









蔦の絡まる大きな館の最長上にある部屋、
はその部屋の窓に近寄り地上を見下ろす。
窓の下にはあの男がいるはずだ、今日もいるはずだ。
雨が降れば赤と黄色の大きな傘をさし、
晴れた日にはそのままに男はそこにずっと立っている。
が男の存在に気づいたのは一週間ほど前の事だ。
決して外に出てはならない窓に近づき、
そこから見える景色だけがの世界。
ベランダに出る事も許されない。
只この設備の整いすぎた室内で生きている事だけが望まれるべき事柄だ。
男は今日もいる。
磨かれきった大きな窓にそっと近づきはガラスに指先を。
少しだけ曇る窓ガラス越しに男を。
最初は幻影かと思った。
二日目に男はに向かい手を振った。
思わずも手を振り返した、男が笑った。
今日もいる、姿を見つめ男がいる事を確認し、
そう安心するようになったのは何故だろう。
乳母達が男を毎度追い返す。
男は乳母達の手を簡単に交わしに手を振りそこを離れる。
が幾ら問うても誰一人明確な答えをくれはしなかった。
あの人は一体誰なの?皆顔を背ける。
は乳母達の集う洗濯場の裏に潜み
彼女達の交わす世間話を盗み聞いた。
男の名前はドフラミンゴ、七武海の人間らしい。
胸が高鳴った。









夕食の時間になっても姿をあらわさない
心配したサンジが騒ぐのも毎度の事であり、
今更誰一人として驚かない。
ならさっき出て行ったぜ。
ボトルを手にしたゾロが言った。
は又出て行ったらしい、今度はどこへ。
誰かに追われているのか誰かを追っているのか―――――


「あいつ何も言わねぇもんな」


ルフィが肉を食う合間にそう呟いた。
皆何も言わず頷いた。









胸が高鳴った。
あの後ドフラミンゴは一気に距離を縮めを攫った。
そうして少しばかりの間共に過ごし、
はドフラミンゴの元を抜け出す。
初めて目にした世界は魅力的だった、ドフラミンゴよりも。


「・・・・おいおい」
「思ったんだけど」


あたしとあんたは一緒にいるべきじゃないって、あの時は。
今朝方はドフラミンゴの住処に出向き置手紙を。
出戻り娘にゃ興味はねぇよ、ドフラミンゴはそう言う。


「自立してみたの」
「ほぅ」
「賞金稼ぎよ」
「そりゃ、ご立派だぜ
「感謝してるわ、あんたにね」
「言われなれねぇ言葉だ」


しかも使いなれてねぇと見た。
長い指先がを捉え切ったはずの糸が絡まる。
ドフラミンゴが見ている。
はドフラミンゴの頬に触れた。

再UP。
足長ドフラミンゴ