'70S LOVERS

他人の権力を借り好き勝手に振舞う彼女を眺めながら
ドフラミンゴは満足気に笑った。
は本当に長ければ長いほどいいと。
それはまあリムジンの話。
どこに行くでも車は必至、
早く行きましょうよドフラミンゴ、の声が高く響く。
ゴージャスな素性は生まれ持ってのものらしい。
ショウは金持ちの娘でありお金が何よりも大好きで
きっとドフラミンゴなんかよりもよっぽどお金の事を愛している。
金がなくなればじきにはいなくなるのだろうし、
若しくは死んでしまうのかも知れない。
社交界のような華やかな場所が大好きで
ドフラミンゴの出向く盛り場総てについてまわる。
昨晩は背の大きく開いた黒のロングドレス、
今晩は幾分プッシーキャット風の超ミニドレス。
湯水のように金を使いまくる。
は今日もリムジンの少し手前で自分を待っている。









「げっ」
「げって何よあんた出会い頭に失礼ね」
「何て格好してやがる」


宝石店に横付けさせたはその店に入り
ドフラミンゴ名義のカードで大量の買い物をした。
どれだけ派手な買い物をしてもドフラミンゴは何も言わない。
ああ似合うぜ、毎度その言葉が請求書と交換される。
今日はドフラミンゴも何やら会議だとかで
席を外していた、は裏口へ向かう。
確かにドフラミンゴとの付き合いは飽きが来ない。
金の切れ目が縁の切れ目―――――
を知る知人達がそう陰口を叩いている事も知っている。
嘘ではないと思うしそれでも構わないとすら思える。
ドフラミンゴはどう思っているのだろう。


「あんたこそ相変わらず貧相な格好ねぇ」
「うるせぇ」


三連ピアスの男と偶然出会ったのは
その裏口を抜けたところでだ。
何かに追われているのだろうか、
少しだけ上がった息がそう知らせる。


「あんた今何やってんの」
「あ?海賊、か?」
「聞かれてもさぁ・・・って海賊!?」
「お前は」


ゾロと初めて出会ったのは今から数年前の事だ。
まだ海賊狩りと称されていた頃のゾロと
少しだけ同じ時間を共有した。
今よりももっとギラギラしていたように思う。
歳月は男を変えたのだろうか。
小さなバッグには幾枚ものゴールドカードが入っている。
はどう答えようかと考えつつも本当は考える気がない。


「よかったじゃねぇか


金持ち掴まえたんだろ。
あの頃にもは言っていた。
確かに言っていたお金さえあれば云々、
ゾロとしても場違いなお嬢さんの気紛れとでも思っていたのだろう。
その証拠にゾロはを止めなかったし引き止めもしなかった。
じゃあな、それだけ呟き踵を返したゾロを
振り返る事もなくも家に戻った。
父親は酷く喜んでいた。
数日後にドフラミンゴとの縁談が組まれていた事を知った。
にしても異存はなかった。









「逃げてんの、あんた」
「まぁな」
「ここ袋小路よ」
「・・・マジかよ」


相変わらず方向感覚は正常でないらしい。


「おい


お前そん中入ってろ。
沢山の足音とゾロの刀が擦れる音。
クリーニング代払えねぇぜ金ねぇしな。
嫌にすっきりとした表情でゾロはそう言うし、
も服が汚れてしまうのは勘弁だと思う。


「じゃあねゾロ」
「あ?ああ」
「もう会わないだろうけど」


小さくそう言いはショップの裏口を開ける。
あたしはお金が大好きでお金はあたしを案外好きでいてくれるし、
だからゾロとは一緒にいられない。
男達の叫び声を背後には煌びやかな店内に戻り溜息を吐いた。









「・・・・どうした、お前」


今日はちょっとだけ地味じゃねぇか具合でも悪ぃのか。
黒の細身スーツを纏ったドフラミンゴが戻り頭そう言う。
襟の高いシャツと太目のネクタイ、
ネクタイを緩めながらドフラミンゴがそう言うのは
ソファーに蹲ったが洗い晒しの髪と
限りなく素に近い顔を曝しているからだ。


「・・・・・別に」
「フ、」


俺の金にも飽きたってか
世間話のようにそう言い、
ドフラミンゴはジャケットをに放り投げる。
香水の香りの染み付いたジャケットを手に取った
何となく胸の中に開いた穴をその香りで埋めようとするが
やはり埋まらずどうしようもない倦怠感を抱いた。
ねぇあんたあたしの事愛してる?
がそう問えばこの男は何と答えるだろう。
お前こそな、きっとドフラミンゴはそう言い笑うだろう。

再UP。
こんな生活してみたいわ