さすれば夢の如く

は今が全てだと思っている。
今目の前に広がる世界が全て、それ以外は虚実それ以外ではないと。
あんたなんかいなくても大丈夫、
あたしは何にも依存なんてしないものあたしは一人でも十分に大丈夫だもの。
嘘とまではいわなくともそれはそうだろうと喜助は思った。
そうですね、あんたは強いですよ。
喜助がそう言えば不思議な事には落ち着いた様子で頷く。
ここより先には誰も入れずその理由は傷つくから、なんて分かりやすい。


「どうせそんなもんじゃない、」
「へぇ」
「これが全部よこれだけ、」


あんたにもあたしにも。
はそれ以上を求めず手に出来たものだけで全てを消化す。
手に入らないとはなから決めつけ、それ以上のものは求めない暮らしを謳歌する。
落胆はない、全てが手に余るほど十分だった。多くを望まなければ。


「自由にはならないんですか?」
「これ以上どうやって?」
「今じゃなくて、」


明日でも明後日でも、一年先でも構いやしないじゃないですか。
喜助は一寸先でも見えやしないのに先の事を言う。
そのくらいの希望はにだって抱ける、そこに行きたいとさえ。
それが落胆にさえ繋がらなければ。


「・・・あたしには出来ないから」
「知ってますよー」
「もう!!」


喜助が背負っているものを蔑ろにする事だけは出来ない。
その部分に触れないよう今の今まで生きてきた。
全ては喜助の手の中に、余計な事など考えず喜助の思惑通りに物事は進む。円滑に進む。
軽い音が響き継続的に続いた、雨が降っていた。

再UP。
2004/10/26