黄昏ノスタルジィ

梅雨だとか豪雨だとか空梅雨だとか言っている最中にでも、
当然のように自分の時間は回り続けるわけで、
それでいてリズムに何ら変動はないものだからは頭痛がすると漏らす。
湿度の関係らしい、詳しくは分からないのだけれども。
原因なんて気にもならない為、
はこめかみをきつく押さえながら頭痛を紛らわす。
今目の前は黄金色の世界だ。
黄金色の中に喜助が消えてしまった。今。
今という概念は間違っているのかも知れない。
いつだって大差ない。
そうして今ここに喜助はいないのだからそうなのだろう。


「お前何やってんの?」
「現世から戻ってきたのー」
「いや、そんな事聞いてんじゃねェよ」
「凄かったよ、雨とか」
「あの、風邪とかひきますよ」


思わず声をかけたのはが笑えるほど(実際は笑えなかったのだが)
びしょ濡れだったからで、そうしてこの世界では
雨なんて降っていないのだからやはり笑える、笑えない。
しょっちゅう風邪をひいただの具合が悪いだのと愚図っているなのだ、
濡れたんなら乾かせよ。


「いやいや、お前化粧とかもう何だよそれ」
「見んな、馬鹿」
「物凄い事になってるぞ、いや、マジで」


きっと、あれは喜助なりの気遣いだったのだろう。
気遣いなんて似合わない真似を。
が泣かなかったのもきっと気遣いで、
振り返らず片腕だけを大きく掲げたのも喜助の気遣い。
そういう事にしておかなければ。


無造作にタオルでガシガシと
髪といわず顔まで拭ってくれている恋次に
気づかれないよう涙を消した。
痛いと呟き恋次の胸を押した。

再UP。
喜助なのか恋次なのか
2005/7/14