喜助は稀に色を塗ってくれる。
持ち合わせたマニュキアで構いはしない。
特にが頼むわけではなく単に塗ってくれるだけだ。
器用だと思う。そうしてまめだと。
そんな時はずっと喜助に身を任せ彩られる指先ばかりを見つめるのだ。
下手をすればじきに憶えるかも知れない、沢山の柄を。
「目、痛くない?」
「ん〜大丈夫ですよ」
「少し休んだら」
さっきからずっとやりっぱじゃない。
そういえばもう半刻くらいは指先を見つめている事に気づき、は声をかけた。
それでも一度やり始めた事は一気に終わらせないと気がすまないらしく、
喜助は休憩さえせず塗り続ける。
は自分が休みたかっただけだったが流石にそれは言えず只されるがままに。
出来上がれば喜助は満足気に笑いどうだと尋ねる。
は毎度素敵ねと答える。
素敵だねと。素敵だねと答える。
「あんたって、勿体ないわ」
「何です?」
「あたしなんかには勿体無い」
何を思いながらそんな戯言を口走るのだろう。
喜助をまるで下僕のように扱う。
喜助はそれに気づきそれでもを持ち上げる。
お嬢様のように。お姫様のように。
何れその立場が逆転してしまうだろうとは思っていた。
そんな事は分かっている。
この尖った爪で喜助の頬に傷をつけよう。
再UP。
ギンの赤い爪とリンクしている…のか?
2005/2/15