ゾロver

「嫌だって言ってるでしょ!!ちょっとゾロ!!」
「何だてめえ怖ぇのか?」
「・・・・・怖くない」
「だったら問題ねぇな、行くぞ
「嫌!!」


言ってろ。 そう言いながらゾロはを引き摺り墓地へと侵入していった。




恐怖に目眩みは大事な事を忘れていた。
毎度それについてゾロを馬鹿にしていたにも関わらず忘れていた。


「嫌!!ヤダってのよゾロ!!」
「あ〜うるせえ・・・・」


無理矢理連れ出したはいいがは喚き続ける。
それだけ騒げりゃ怖くもねぇだろ。
ゾロがそう言えば怖がってなんかないわよと。


―確かこの真ん中の道を真っ直ぐ進めば・・・


入り口から集合地点までの道は一本だ。
なのにゾロは早くも迷い、それには気づいていない。
ゾロは思う、何でこんなに分かりにくいんだと。


「聞いてんのゾロ!?もう帰りたい!!」
「うるっせえ女だな!!置いてくぞ!!」
「なっ・・・」


言葉を失ったを見てマズったと思う。
確かには我侭で横暴で手のつけようがないが、別に男勝りなわけではない。
ゾロは知っている、はすぐ泣く。
辺りは墓地、道は分からない、は泣く。


「何よぅ・・・・」


涙目のはゾロを見る。


「・・・泣くなよ」
「泣かないわよ」


ゾロに背を向けたは(多分)涙を飲み込んでいる。
ゾロは溜息をつくとその場に座り込んだ。




「・・・・何してんのゾロ」
「見りゃ分かるだろ」
「見りゃ分かるじゃないわよ!!」


ゾロは座り込んでいる。
はゾロの腕を引っ張るが彼は動きそうにない。
場所は墓場だ、薄気味の悪い声がする。
否、場所は墓場のはずだった。
ゾロの行動によりようやく少しは落ち着いたが辺りを見回せば
墓のはの字もなく暗い森が延々と続くだけだ。


「ね、ねぇゾロ・・・ここ、どこ!?」
「さぁ、知らねぇ」
「・・・は?」


ゾロは気にもたれかかる。
は一人呆然と立ち尽くしていたが思い出してしまった。
ゾロの方向音痴を。
よく見てみればすでに道らしきものはなく、雑草が茂るだけだ。
ゾロが寝転がっている場所は平地になっており、
どうやらゾロ自身そこから動く気はないらしい。


―これは、もしや・・・・


こういう状態をずばり遭難というんじゃないのか。
は一人考えるがこればかりはどうしようもない。
ああ腹がたつ、はゾロを見下ろす。
ゾロはすでに目を瞑っており目的地に達する事は諦めたようだ。


「ちょっとゾロ!!ゾロ!!」
「・・・・何だよ」
「何だよじゃないわよ何してんのよ!!」
「寝てんだよ・・・あぁうるせぇ・・・・」
「何でこんなトコで寝れんのよおおお!!」


墓場からは抜け出したものの現在地は見も知らぬ森、辺りに明かりは皆無。
はゾロに怒鳴る事でどうにか恐ろしさを誤魔化している状態だ。
起きろと強要するにゾロは動じず寝入ろうとする。


「寝るな!!」
「寝れねぇよ!!」


大体テメエここがどこだか分かって言ってんのか?
無闇に歩き回るよか明るくなるまでここで待ってた方がいいんだよ。
ゾロは尤もらしい事をに告げる。
不服そうにむくれたはゾロを見る。


「・・・・帰れるの?」
「あ?」


トーンの落ちた淋しそうな声、ゾロは目を開ける。
目の前には心細そうな顔をしたが。
そうやってりゃ可愛いんだよ、そう思う。
ゾロはに手を伸ばした。


「心配ねぇよ」
「何で」
「何でって・・・・」


あいつらも朝まで帰らなきゃそれなりに心配くらいするだろ。
ゾロはの手を引く。
何、そう聞いたにいいからお前も寝てろよ、と。


「ヤダ、汚れる」
「お前この期に及んで・・・」


この我侭、そう思うがここはぐっと我慢を。
はゾロの膝に乗る。


「何やってんだ・・・・、てめぇ」
「これだったら我慢する」


はゾロに寄りかかり不満げにそう呟く。
ゾロの顎のすぐ下にはの頭が、は目を瞑った。




「・・・・おい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」


―こいつマジで寝やがったのか?


自分から寝ろと言った割りにはゾロは眠る事が出来ずにいた。
の寝息は随分前から聞こえており、
無防備にもほどがあると呆れたものだ。
結局ゾロは朝方まで眠る事が出来ずに、のみが快適な睡眠を貪った。




「ん・・・・」


朝になりようやく目覚めたは、ゾロの事など空を見上げ背伸びをする。
最初にうつったのは隙をつかれたゾロの顔。


「あ」


互いに予想だにしなかった口付け、は固まる。


「何してんだよ」
「・・・・・何してんのよゾロ・・・」


これはテメエが。
そう言いかけたがゾロは黙る。
そして笑いながら、今日も帰れねぇかもな。
そう悪戯に呟いた。

再UP
ゾロver。
昔も今も大して数が増えなかったゾロです… 2003/11/19