サンジver

「嫌だって言ってるでしょ!!ちょっとサンジ君!!」
「そんな事言ったってもうみんな行っちゃったよちゃん」
「え!?」
「ほら、そろそろ俺達も行かなきゃ、ここでこうやってても俺はいいけど」
「行かなくていいって!!」
「だって合流地点ここじゃないし、何かここ、でるらしいよ」
「やめてよおおお!!」


やっぱり可愛いぜ。
そう確信しつつサンジはを連れ墓地へと侵入していった。




は不信な目つきでサンジを見上げる。
は本能的に察する。
今の状態無理を言えばサンジは否応なしにいう事を聞いてくれるだろう。
しかし怖い、辺りは墓だらけだ。
ガサリと揺れる草、はサンジに縋りつく。
自分が怖がっている状態が気に入らない、
まるで子供の言い分だがにとっては正当だ。


「・・・・もう嫌だ」


ポツリとが呟く。
彼女の我侭にサンジは最後まで付き合おうと。
の本領発揮はこれかららしい。





「帰る」
「え!?」
「こんなトコもう嫌」
「いや、だってちゃん・・・・」
「ねえサンジ君帰ろう?」


両手でサンジの右手を握りはそう呟く。
このままを押し切り先に進むことは不可能だ。
瞬間にそう悟ったサンジは考える。
は時折酷く怯える。
彼女をそこまで怖がらせておく事は出来ない・・・。


―けどなぁ・・・一応集合地点ってもんが・・・


タバコの灰が落ちサンジが何かしら考えている事にも気づく。
一体何考えてんのよサンジ君。
はそれすらも気に入らないらしい。(どんな我侭だ)


「そっかぁサンジ君・・・・嫌なんだ」
「え?」


よしもう一押し、は企む。
まるで子供が大人に対し我侭の実力行使に出るかの如く。
しかし、そんなに予想だにしない事件が起きてしまう。


「ねえちゃん、もう少しだけ我慢出来ないかな」
「―え」


サンジは優しく諭す。
このまま俺とちゃんだけが戻ったら迷惑が云々等。
はご立腹だ。
サンジがの我侭を却下した事はこれが始めてであり、は戸惑う。
吹き曝しの墓標は幾数も立ち並び
勝手な孤独感まで感じ始めたは落胆し項垂れた。


「何で?」


他の人間ならいざ知らずサンジに却下されたという事が、
よほどショックだったらしい。
は半泣きでサンジを見上げる。
あどけないの顔、サンジは困ったように笑う。


「だってちゃん―――――」


ちゃんが怖いっていうんなら俺が守るから―――――
そう決め台詞を言おうとしたサンジは
前触れもなく音を立てる木々に邪魔をされる。
はこれまで以上に心細くなったらしく、
悲鳴を上げ耳を塞いでしまった。


「もう嫌だぁ・・・」


木々と共にサンジの心は揺れる。




女の子は少し我侭な方が可愛いんだよちゃん―――――
そう言ったサンジにゾロは言った、限度があると。
馬鹿言え彼女なら許せるんだよ。サンジは考える。
目の前で蹲ったは自分に対し猜疑を。


ちゃん」
「なぁに・・・」


拗ねた口振りで返事をしたにサンジは近寄る。
サンジはくわえていた煙草を手に取りの背後に投げ捨てた。
微かな音が聞こえが又目を瞑り耳を塞ぐ。
視界ゼロの状態、微かにタバコの香りが鼻先を掠め唇に何かの感触が。
は目を開けた。


「何?」
「こっちに気がむけばそう怖くないだろちゃん」
「・・・・分かんない」


しかしは立ち上がる。
そんなのじゃ騙されないから、
サンジにそう言いながら手を掴んだ。
一瞬動きの止まったサンジはを見る。


「何よう」
「・・・いや、何でもないよちゃん」


自ら握った手。
サンジは参ったな、そう笑いながら道を進んだ。




翌日徐にサンジ君は苦い(どうやらタバコの事らしい)
と発言したのせいでサンジがゾロに因縁をつけられるのは又別の話だと。

再UP
サンジver。
甘いぜ… 2003/11/19