蒼キ森ノ幻覚等

「・・・・・・・あれ?」


メーターがやけにぶれていた。
ガソリンは入れたばかりだし、水圧計もいかれてはいないはずだ。
油圧計の故障か、しかし機械系等の故障ではない気がする。


「おいおいちょっと待ってくれよ・・・・!!」


ハンドルを切ろうとすれば逆方向にタイヤが動き、
はそのまま倒れ込む。
妙な感触だ、思わずゴーグルを外したは辺りを見回した。




「―で、原因は何だったんだい?」
「原因っていうかな・・・」




耳障りな笑い声が聞こえていた。
直感でその声の主が一連の不具合の原因だと思った
バイクを立たせ張本人を探す。
場所は奇妙な森の近くだ、薄気味の悪い感じは否めず
青緑色の木々が意思を持ったようにざわめく。


「何か用でもあるのかよ、おい!!」
「フッフッ、」
「な〜に笑ってやがんだ!面ぁ見せやがれ!!」
「しかしまぁ口の悪ぃお嬢さんだな、おい・・・・・・」


タンクに傷がつかなかった事が唯一の救いであり奇跡だ。
最近塗装しなおしたばかりのそこは
汚れはしたものの傷だけはつかないですんだ。
はつなぎにぶら下げていたスパナ(大)
を手に取り軽く回すと気配の濃い方向に投げつける。


「ああ!?」


しかし先ほどのバイク同様、予想だにしない方向にスパナは飛び
の腕はそのまま固定する。
外側から無理矢理に押さえ込まれているような感覚。
原色に染められた短い髪が逆立った。




「ほぅ、そりゃ奇怪だな」
「だろ?大体あの場所がよくなかったんだ」




自然色の中にどぎつい人口色が紛れ込む。
今日日カメレオンだってもう少しマシな色で登場するぜ。
が呆れたようにそう言えば
ドフラミンゴはおかしそうに笑った。
どうやらこの森自体が自然のものではないらしい。
人工的に創られた木々、
水分も日の光もまるで必要とせず鮮やかさだけを曝す。


「何しに来た」
「何もしやしない、通り道だ」
「フッフッ!泥臭ェ格好だな」
「好きでしてんだ、余計な口はさむなよ」


ドフラミンゴはに近づきながら観察するように見回した。
顔に付着した砂を指先で落としながらまじまじと顔を見れば、
造形の美しさが垣間見れドフラミンゴは嬉しそうに笑う。
怪訝そうな目つきでドフラミンゴを見ていた
恐れや怯えは何もなく只嫌そうに見上げるだけだ。
見るからに胡散臭そうな男だ。


「フッフッフッ!そう露骨に嫌な顔するもんじゃねェぜ」
「こういう顔なんだ、もともとな」
「可愛げのねェ女だな、お前、名前は」
「そんな事聞いてどうするんだ?」
「俺が聞きてェから聞いてんだぜ、無駄口叩かずに答えろよ」


じゃなきゃここで犯すぜ。
至極愉しそうにそう言うドフラミンゴを見ながら、は猜疑を更に深くする。
どこかで見た顔だ、逆光の中サングラス越しにでは目もよく見えず、
はドフラミンゴから視線を逸らさぬまま考える。
バイクを転がすだけが人生であり、しかしそれだけでは生きていけない。
仕方なしに手をつけた賞金稼ぎ、その中の高額リストで見た気が。


「フフフ!やっちまってもいいのか?おい・・・・」
「ドフラミンゴ!ドンキホーテ・ドフラミンゴだろお前!!」
「あん?」


何だよ賞金首以外に用はねぇよ。 は残念そうにそう呟き溜息を。
お前の名前は。
ドフラミンゴがそう聞けばうざったそうにだと。
いいからこの妙な状態を解いてくれよ。
少々拍子抜けしたドフラミンゴは面白くなさそうにを解放した。




「七武海かい?」
「そうらしい」
「―で?」




あんた一体何なんだよ。
近隣の工場を探しているの後をドフラミンゴは歩いている。
大体あんたのせいで調子が悪くなったんだぜ。
がそう言えどもドフラミンゴは笑うだけだ。
何でそんなモン転がしてんだ、おい。
ドフラミンゴはそう言い細い指でバイクに触る。
ヒヤリとした鉄の感触、油臭い原因はこれだ。


「おい、テメェは賞金稼ぎか?」
「まぁ、たまにはな」
「くだらねェな」
「そう言うなよ、金が稼げるだけ重宝してんだ」


ドフラミンゴは少々馬鹿にしたような感じでに問いかける。
大体その格好から頂けねェな、俺が囲ってやってもいいぜ。
あんたの格好は派手過ぎるんだよ。
は呆れたように言い返す。
あんたに囲ってもらわなくても結構だ、
それにしてもどこまでついて来る気だ?
この人工的な森は果てしなく続くらしい。 機械仕掛けの小鳥は終始鳴き喚くし、形だけの小川も延々と流れ続ける。


「フッフッフッ!別にをつけてるわけじゃねェ、俺も用があるんだよ」
「・・・そりゃ、悪かった」
「でもよォ、そっちに行ってもホログラフが続くだけだぜ、
「ああ!?」


そう言うことはもっと早く言えよ。
は叫ぶ。
目に見えるモンばっか信じるからいけねェんだぜ、足元だって砂じゃねェ。 そう言われ地面を見れば色を塗られたベルトコンベアーがゆっくりと動いていた。


「どこに行けばいいんだ・・・?」
「フフ!フフフ!!俺を信じるのか?
「・・・・・・・・・・やむを得ないだろ?」
「俺は会って間もねェ奴を信じるなんて芸当は出来ねェんだ」


じゃあどうしたらいい。
バイクを止めは問う。
ドフラミンゴの胸元から取り出されたのは薄いリモコンで、
電子音が鳴り響き木々の間が開いた。
中から現れたのは奇妙な小屋で悪い予感は的中す。


「・・・・・・・何だ?これ」
「お菓子の家」
「ああ!?」
「ヘンゼルとグレエテル、来いよ


先に扉を開けたドフラミンゴ越しに見えた内部はやけに派手で、
光を反射するような銀色の床が見えた。




「そりゃ刺激的だな、おい、
「あそこだろう?エース、お前の言ってた船ってのは」
「うん?」


そう言いは一つの海賊船を指差す。
麦わらを被った髑髏マークが目印の海賊船、エースが途中話していた海賊船だ。
何だい、お前知ってるのか?
エースがそう言えばあの船の奴も乗せた事があるんでね、はそう言い笑った。

再UP
ドフラミンゴverなんですが…
舞台が気色悪過ぎる。
2003/11/19