干上ガッタ水場等

「あ〜〜っ!!最悪だ・・・・!!!」


一人そう叫びながらはバイクの周りをウロウロと徘徊していた。
元々は何かしらの店だったのであろう廃屋には自販機すらなく、
ガラスの割れた窓や他愛もない落書きの施された壁が目に付く。
空を見上げれば高笑いをしているような太陽が勝ち誇り、喉は渇くし腹も減る。 は白い煙を吐き出している愛車を見つめた。


「何で・・・・・・・」


エンジンの調子はそう悪くはなかった、むしろ絶好調の類だ。
鈍い音しかしなくなってしまったこのバイクは廃車寸前だ。
携帯で連絡を取ろうにも圏外―――――
こんな場所でどうしろっていうんだ!?
飢え死にしろってのかコラ!!
誰にとは言えない悪態をつきながら、はタバコを吸おうと思うのだが
今日に限って残り本数が極端に少ない。
こんな郊外には人も住まないし通り過ぎる物好きもいやしない。
は半壊した自販機を強かに蹴り上げた。


靴の裏で火をつけたマッチでくわえたタバコに火をつけたは、
廃屋の入り口に背をつけ座り込んでいた。
廃屋の中に入り込み見つけたのは唯一生きていたアイスボックスで、
その中には食えるかどうか分からないアイスが数本。
賞味期限を調べてみたもののどこにも明記されてはおらず、
しかし喉が渇ききっていたはそれを手に取ってしまった。


「あ〜〜〜〜〜暑ぃ」


バイクが動かなければどうしようもない。
誰でもいいから通りかからねェのかよ。
は半ば諦めきった様子で目の前に広がる大きな道を見つめ続けた。




「そりゃ・・・・・災難だな、
「あれにはまいったぜ」
「そんで、どうなったんだ?」




ユラユラと身体を揺さぶられは不機嫌な声を漏らす。
あのまま不貞寝してしまったらしい、
目を開けば見知らぬ男がを覗き込んでいた。


「うわっ・・!?」
「テメェ、こんな所で何してやがる」
「あ?あ―いや、何・・・・・」


ニヤリと嘲笑った男はの頭を撫でる。
よせよ、思わずそう言いその手を払った
まじまじと男を見上げた。
顔を横断した傷跡、見透かすような何とも嫌な視線。
あまり宜しくない人物のような気がしないでもない。


「あんた―・・・」


こいつもどこかで見た事がある―――――
は男を見上げていたのだが、辺りが暗いせいかやはり思い出せない。
おい、何呆けてやがる。
男はに何かを言っている。


「いや、あんた、どっかで見た気が・・・」
「さぁな、俺はお前の事なんざ知らねぇぜ」
「そりゃ今日初めて会ったんだ」


いいから俺の質問に答えろ、お前はこんな場所で何をしてやがる。
クロコダイルにそう言われたはバイクを指差し
足止め喰らってんだよ、と。
何だ?テメェのか。
何故だか嘲るようにそう言ったクロコダイルはそう言いを立たせた。
その時揺れた毛皮の隙間から見えた片腕。
それを目にした瞬間は男の素性に気づいてしまう、
そんなにクロコダイルが気づくのもほぼ同時だったのだが。




「何だ?又七武海か」
「そうなんだよ、まいったぜ」




「あんた、クロコダイルだな」
「あ?」
「あんたこそこんな所で何してんだよ」


アラバスタにいるんじゃなかったのか?
ツラツラとそう話すにクロコダイルは猜疑を持つ。
何だテメェ、どうして俺の事を知ってやがる。
クロコダイルがそう言えば、海賊は嫌いなもんでね、はそう答えた。
クロコダイルはフンと笑いを見下ろす。


「テメェ、名前は」
「ショウ」
「―――――で、だ。そのはどうして海賊が嫌いなんだ?」
「海賊のあんたに言うべき事じゃないだろ」
「独り言にでもすりゃいい、どうせテメェもここで一晩明かす気なんだろうが」


間が出来りゃ何が起こるか分からねぇぜ。
クロコダイルはそう言い笑う。
タチの悪ぃ男だな。
はそう呟きながら冷え切ったバイクに触れ、仕方なしに話をし始めた。




「俺も海賊だぜ?
「そうだろうな」
「俺も嫌いかい?」
「好きも嫌いもねぇよ、今はな」




まぁ元々海育ちでね、海賊紛いの事もしてた時期もあった。
親の面なんか知らねぇし育ててくれたのはジジイだし、
なぁあんたもさ、こんな話聞いたって面白くも何ともねぇだろ、おい―――――
がそう言えば、クロコダイルは続けろと言わんばかりに手を振る。
ああ、面倒臭ェ奴に引っかかっちまったな。
はエンジンをかけるがまだバイクは生き返らず。
そのまま朝まで延々と話を続けさせられた。


「・・・・やった・・・」


軽快な排気音が朝方の空に木霊する。
心底心配したぜ、バイクを、愛でながらそう囁く
クロコダイルは馬鹿じゃねぇのか、テメェは、そう笑う。
そのまま跨ったはクロコダイルに視線を移し
あんた、どうするんだ?
そう聞くがクロコダイルは何も言わずにを見るだけだ。


「・・・・・・何だよ」
「いや・・・・・」
「あんた、そこにいるんならアイスが食えるぜ」
「何?」


あのボロ家の中にアイスがあるんだよ。
まぁあんたみたいな金持ちが口にするモンじゃねぇかも知れねぇけどよ。
はそう言い走り去った。




「で、結局・・・・・何だい?その話は」
「さぁな、ま、そんな事があったって話だ」
「そこで、終わりなのかい?」
「いや、それが・・・・・・」




やはり太陽がより勝っているらしい―――――
悠々と歩いて来たクロコダイルはクククと笑いに近づく。


「こんな所で何してやがる、
「あんたもな・・・・・」
「何だ?俺に逢いたかったか」
「二度と面ぁ拝みたくねぇと思ってたよ」
「ご挨拶だな」


白い煙を吐き出しているバイクを見つめながら
は忌々しそうに溜息をつき、
そんなを見ながらクロコダイルは笑った。




「そりゃ災難続きだな、
「あそこだろう?エース、お前の言ってた船ってのは」
「うん?」


そう言いは一つの海賊船を指差す。
麦わらを被った髑髏マークが目印の海賊船、エースが途中話していた海賊船だ。
何だい、お前知ってるのか?
エースがそう言えばあの船の奴も乗せた事があるんでね、はそう言い笑った。

再UP
クロコダイルver
何か、凄く…友達です…
2003/11/19