赤キ言霊ノ云々等

「こりゃあ―――――」


ブレーキをかけたは緩々と前進した。
目の前には崩壊した道があり、
上を見上げれば崖崩れを起こした岩山が聳えていた。
辺りを見回せば岩山の反対側には海が。
遠回りしようにもどの道ここを通らなければ先へは進めない。
この妙な島は何なんだ―――――
やけに地盤が緩いのかこういう土砂災害が頻繁に目に付いた。


「どうするかねぇ・・・・・」


ライトを点けたり消したりしているには
前方で揺らめく影が見えなかった。
初期の目的はこの島の横断だ。
そう大きくない島の為二日ほどで出来る予定だったが。


「―――――うん?」


点滅をやめは前方を煌々と照らす。
やけに大人数の男達が群れをなしを見ていた。




「そりゃおっかねぇな」
「時間帯が時間帯だったからな」
「で、どうなった?」




「いやあそうだったんだ、悪ぃな!」


焚き火を囲い集う集団の中にはいた。
差し出されたグラスを一思いに飲み干し、
隣に座る男の背を勢いよく叩けば尚更上機嫌だ。
こんな場所で宴とはあんた達もよっぽど好きなんだな。
肩膝を立てたは隣の男に言う。


「オメェはんなトコで何してんだ?」
「いや、この瓦礫のせいで先に進めねぇんだよ」
「そりゃ災難だな」


まぁそう辛気臭い話は後にしようぜ、あんた名前は。
ジョッキの容量以上に注がれたビールは土を潤す。
男はシャンクスと名乗りも名を名乗る。
どこからか聞こえる肉食獣の鳴き声や静か過ぎる夜の音、
は酒を煽り続けた。
シャンクスはシャンクスで、
何だ嬢ちゃんいける口じゃねぇか、
などとに酒を勧めるものだからは更に調子に乗る。


「ん?んん・・・・・?」


意識低迷中のは月夜に騒ぎ立てる男達をグルリと見回しながら、
シャンクスという名前に少なからずとも覚えがある事を知る。
片目を横断した三本の傷跡、片腕のない男―――――
しかし酒の勢いがあまりにも強すぎた為考えを放棄した。




「シャンクス・・・!?」
「何だエース、知ってるのか?」
「ああ、まぁな、で?」
「それでよ、」




「ん、んんん・・・・・・・・」


グラグラと揺れる感覚には目を醒ます。
懐かしい匂いがするのだが、
それよりも今は胃の中のものを吐き出したい。


「うっ、ヤバ・・・!!」


どうやら船の上らしい。
しかしその理由を考える余裕などない。
は甲板に飛び出し目下の海原へと強かに嘔吐した。
頭が痛ぇ、それが二日酔いだと分かるのにそう時間はいらなかったが、
船の上だと分かった以上心配するとすればバイクの事だけだ。
が視線をうつせば自分が寝ていたすぐ側にバイクは置いてある。
は即座に近寄り点検を。


「おいおい今日も絶好調じゃねぇか、愛してるぜ」


そう呟きガソリンタンクに軽く口付ける。
おい何やってんだよ
少し驚いたようなシャンクスの声が聞こえ、
はまずったと思いつつ顔を上げた。




「ちっと恥ずかしいな、そりゃあ」
「うるせェよエース、捨ててくぞ」
「・・・悪ぃ」




シャンクスもどうやら多少昨晩の影響を受けているらしく、
具合は宜しくないようだ。
ドア入り口にもたれかかり一度大きく欠伸をすれば
眠たそうな目でを見る。
ああ、あんた海賊だったんだな。
がそう言えばシャンクスは軽く頷いた。


「勝手に乗せちまったんだが―――――不都合ねぇんだろ?」
「どこに行くんだ、この船は」
「さてな、お前はどこに行くんだ?」


なるべくならとっとと陸に上がりてぇ。
は少し笑いそう呟く。
何だ、海は嫌ェか?
シャンクスがそう言えば頷き、
色々思い出しやがるからな、そう続けた。
なら仕方ねぇな。
シャンクスはどうやら納得したらしく、
一度どこかへ消え少し間を置き戻って来た。


「あと少しで一番近ぇ陸に着くぜ、
「あ、そりゃどうも」


波音を聞けば普段は絶対に思い出しはしない事などを思い出してしまい、
ノスタルジックに浸る余裕はあるのだが何分テンションが下がる。
少しばかりナルシスト染みながら、
なぁシャンクス、世の中ってのは侘しいな、
そう自分に酔えば軽く笑い流された。


船はどこかの港につきはバイクと共に下船する。
何かお礼の一つでもしなきゃなんねぇな。
がそう言えば
いらねぇよ、シャンクスは笑った。
バイクに跨り軽くふかせば排気ガスが立ち上り、
騒音にも近い音を鳴り響かせながらはゴーグルを装着した。


「おい!」
「うん?」
「海は好きになれねぇか!?」
「どうして」


は微かに笑いながらそう叫ぶ。
息をし始めたバイクは音を鳴り響かせ温い風を巻き起こす。
の返答を求めているようなシャンクスは笑んだままだ。
は少し考えた振りをし叫ぶ。


「海には道がないだろう?」


の一言にシャンクスは一瞬言葉を詰まらす。
しかし軽く手を振ったを見つめながら
そりゃ仕方ねぇな、そう呟き踵を返した。




「海が嫌いなのかい?は」
「まぁな、道がなけりゃバイクは転がせねぇし、仕方ねぇや」
「そりゃ確かに仕方ねぇ」
「あそこだろう?エース、お前の言ってた船ってのは」
「うん?」
そう言いは一つの海賊船を指差す。
麦わらを被った髑髏マークが目印の海賊船、エースが途中話していた海賊船だ。
何だい、お前知ってるのか?
エースがそう言えばあの船の奴も乗せた事があるんでね、はそう言い笑った。

再UP
シャンクスver
海を嫌いな理由は過去に何かあったとかなかったとか
2003/11/19