ユレイユ

寝苦しく目覚めたのは
何も気候の違いだけが理由ではないだろう。
薄暗い室内ぼんやりと
しかし確かに目覚めた伊武は天井を見つめる。


「・・・・・・・おい」


同じベッドで寝る事に対し両者何の異存もなかった、
昔から何となくそうしていた習慣のようなものだ。
しかし少しばかり間があきこのにしても
少なからず大人になっているだろうと―
儚い望みを託していただけだ。
の腕が伊武の胸元から顔にかけ乗せられ
身体に関しては半分以上が乗せられている。
これは寝辛いはずだ否
それよりもの寝心地はいかがなものか。


「邪魔なんだがな・・・!!」
「・・・・・ん」
「テメエ起きろコラ!!」


その後伊武は激しい後悔を募らせる事となる。




お世辞にも女性らしいとはいえない叫び声が木霊し
その直後ドタバタと深夜には相当相応しくない音が連続した。
無論選手達は部屋から顔を覗かせ音の発生する場所―
伊武兄弟の部屋を見守る。
相変わらず騒がしい音が木霊している、
あの兄弟はこんな時間帯にさえ騒動を齎すというのだろうか。


「・・・今度は何や」
「まったくこんな時間に・・・・」
「緑川は?」
「寝てる・・・」


伊武の怒号のような叫び声が木霊した瞬間
ドアが思い切り開かれた。
が飛び出しその後に伊武が出て来る。
の腕を伊武が掴んだ、
が伊武の足を思い切り踏みつける(サッカー選手の足を)


「あんったって本当最悪ね!!」
「あんた!?テメエ誰に向かってんな言い方―」
「節操もないの!?天下の伊武様が!?」
「ああ!?そりゃ一体何の話だ!!」
「何なの!?夜這いなの!?」



「「「よ、夜這い!?!?!?」」」



思わず口を挟んだのが運の尽きだ、
その時声を出したのは騎馬・尼崎・槌矢の三人。
と伊武が同時に振り返る。


「テメエら・・・・」
「ちょっと聞いてよ!!」
「お前は黙ってろ!!」
「何よ変態!!」
「ああ!?」


話をまとめたらこういう事やね、
勝手に仕切り始めたのは尼崎だ。
伊武さんとちゃんは一緒の部屋の一緒のベッドで寝た。
そしたら伊武さんがちゃんに夜這いをかけた―
幾ら伊武さんでもあかんですやんか〜、
何故だ尼崎の声は嬉しそうだ。


「違う」
「その通り」


兄弟の声がダブる。
そうして喧嘩腰の視線が交錯する―
明らかにの勘違いなのだが
何故だか伊武に追い風な風向き。


「おいお前ら・・・・・」


まさか俺の言う事疑ってるわけじゃねぇだろーな、
伊武の声が。
騎馬・尼崎・槌矢の三人は何ともいえない表情で稀に苦笑いを。
はそんな伊武の隣で腕組みし三人を見ている。


「俺眠たいわ・・・」
「俺もっス」
「どうせの勘違いや、それでええやろ」
「そーっスね、」


これ以上伊武さん刺激しても意味ねーっスね、
尼崎はを宥め伊武を諌め一人てんてこ舞いだ。


「しかし皆起きんもんやな」
「眠り深いんスね」
「明日も早いんやろ、寝ぇ」
「いや、けど―」


そーもいかねーみたいっスよ、
槌矢の指差した先には
今夜は寝かせないといわんばかりのの姿が。
意味違いなら相当嬉しいその言葉も
に関しては意味が根本から違う。
それは皆が理解している。


「も〜目醒めちゃった」
「寝た方がよくないっスかね」
「馬鹿言ってんじゃねェ
そいつらは今から俺に付き合うんだよ」
「いや・・・それも無理や」


我侭な兄弟の振り回される二人の常識人―
その時既に尼崎は自室に戻り寝ていたらしい。

伊武さんがとんでもなくシスコンにね・・・
そして主人公も物凄いブラコンだという。