08---

殴ってよ、そう呟いたの背は少しだけ透けていた。
殴ってみなさいよ、はぼんやりと前だけを見ている。
黒澤はやってられないとばかりに頭をかき黙り込んだ。
女を殴れる道理がない。
そんな、そんな情けない真似だけは決して。
が望んでいたとしても。
確かに血の上ったは途方もない事を口走る。
確かに黒澤だって相当頭にきた。
途中で呆れた、どうでもよくなった。哀れな。
黒澤が具合が悪くてもお構いなしのは会いたがる、焦がれる。
少しだけ疲れてしまったのだ。


「好き?」
「・・・ああ」
「嘘吐かないでよ」
「嘘なんか吐いてねェよ」
「好きなんかじゃないクセに」
、お前いい加減に―――――」
「あんなに嫌な事ばっか言うあたしの事好きでいれるわけない」
「・・・・・」


は泣いているしその涙の理由は黒澤には分からない。
罪悪感なのか嫌悪感なのか。どちらでも構いはしないか。
の事を好きだといえる理由は何だろう。
そんな事さえ分からなくなってしまった黒澤は、
思わず吐き出しそうになったため息を
無意識に飲み込み冷えた感触を嫌がった。

何故か再UPし忘れていた
2005/4/3