どこかに行こうかと言い出したのは別にでもなければ、
今の生活に辟易としているらしいあの男でもなかった。
どうやら嫌な事が山ほどあったらしい、
だから今こんな夢物語を口走っているのだろうとは予想する。
口には出さない。彼を痛めつけるものが何なのか、それもは知っている。
時間とやらにさえ傷付けられている。
全てを忘れてしまえる薬でもあればいいのにとは思い、
同時にそんなものはないと笑う。
そんなものがあれば皆幸せに生き死ぬ。
幸せの価値が暴落し何も思わない平坦な世界の完成だ。
それもそれできっと詰まらないだろう。
「けどなぁ」
「何ち?」
「あんた、意外と脆いから」
「は面白か事ば言うね」
「だって、」
おいはそがん弱くはなかバイ、九里虎はそう言い笑う。
この男が強いという事実は知っている。彼は強いのだろう。
それと比較しようとは思わずそれでもは脆いと思う。
「どうせ又浮気でもばれたんでしょ」
「しまったったい・・・」
「今更じゃない」
「まさかあそこで鉢合わせすっとは夢にも・・・」
「あたし明日早番だからそんな長くいれないわよ」
「冷たか女やね、お前は」
「人でなしですよねーあなたは」
「おいは優しかよ」
無邪気に笑う九里虎を見つめその残酷さにため息さえ漏らした。
言葉が近い
2005/1/15