乾燥するカメレオン

今日も今日とてあの馬鹿(この場合九里虎らしい)は
何かしらの病気を移されたらしく、
(その場合早急に処置をしなければ被害は拡大するに違いない)
抗生物質を飲んでいた。
そんな九里虎を横目に何となく空を仰いだ黒澤は、
内心結構浮き沈みの激しい己を無理に抑えている。
まさか自分が、そう思う反面好きだからしょうがないと開き直る事さえ出来る。
珍しく本気で好きなだけだ、別に遊びたいわけではないし、
今迄本気でなかったというわけではない。
只我ながら心意気が違うと。
死ぬほど好きで、そうして大事にしたいと思わせる相手だっただけの事。


「〜〜っち、まいったバイ」
「入れ食い状態もいいけどよ」
「こら一週間は絶対安静バイね・・・」
「他の女にうつしちゃ洒落んなんねーだろ」
「しまった・・・しまったバイ・・・」


大げさに頭を抱え込みしゃがみこんだ九里虎を眺めながら、
ふとの顔なんて思い出してしまい黒澤は場違いな嫌悪感に苛まれる。
何ねニシャどかんかしたとね。
怪訝そうな顔をして黒澤を見上げる九里虎にしてもそうだ。
の学校が終わるまで何となく自分が鈴蘭にいる理由もない。


「残念だったな。一週間は安静にしとけ、馬鹿」
「・・・・・ピンときたバイ」
「あ?」
「クロサーお前、女おるやろ」
「は!?」


野生の勘に後押しされた九里虎は黒澤に詰め寄る。
何ねお前も水臭かね、どこの娘ね名前は何ね―――――
鬼の首をとったかのようにニヤニヤと笑いながら黒澤に詰め寄る九里虎。
馬鹿言ってんじゃねーいねーよ。
黒澤はそんな九里虎を振り切りながら顔を背ける。


ちゃんち言うとね」
「なっ」
「もしも〜し、グリグリバイ」
「てめー!!」


いつの間にかなくなっていた携帯は九里虎の手中に。


「何勝手にかけてんだよ!!」
「まあまあ。今度会わせんしゃい」
「会わせねえよ!!!」


顔を真っ赤にした黒澤はそう叫び携帯を見た。
別に九里虎は誰にもかけてはいなかった事に気づき、
又一つ大きな声を上げた。

お父さんかと思いました。
九里虎が。
2004/12/2