シンデレラは誰の夢を見たのか

• やけにざわついていると思えば、
  長期間派兵されていた第三特殊部隊がようやく任務を終え、
  悠々と凱旋したらしい。
  確か、通しで二年は派兵されていたと思う。
  元々、随分と力のある部隊で、昔はよく合同の作戦をしたものだ。
  
  
  だなんて、過去を懐かしむ余裕は今のところなく、
  今まさに捕らえられ、こちらを跨ぐ女を見上げている。
  
  
  
  「時間がないのよ、キロランケ」
  「…よぉ、。随分久々じゃないか」
  「あたしが恋しかった？」
  「あぁ」
  「あたしに会いたかったの？」
  
  
  
  そう言いながら徐に上着を肌蹴る女の名は。
  第三特殊部隊隊長だ。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  キロランケがと初めて出会ったのは、もう随分昔の話になる。
  彼女は若い頃からこうで、常に中心にいた。
  
  
  キロランケがこの組織に引き抜かれた時には既に在籍しており、
  最初は何かの冗談かと思った。
  
  
  酷く若かったし、この見た目だ。
  恐らくに初めて会った男は皆、
  一様に同じような印象を覚えたと思う。
  
  
  素性は知れないが(誰もがここに来る前の過去を知らないし、
  自身が口にしないからではあるが)
  既にそこにいたは、当然ながらそれなり以上の能力を持ち、
  結果、同期とは少し違うが、大体一緒の時間を過ごした。
  
  
  そもそも初見で分かるように、この女は随分とゴージャスだ。
  美しく、強く、聡明。
  自らを選ばれし者と呼び憚らない。
  
  
  何ものにも媚びず、何ものにも引かない。
  まだ隊を持つ前に幾度も作戦を共にし、
  その辺りから既にこのような戯れを
  繰り返していたような気がするが、最早記憶にない。
  
  
  ほくろの位置まで熟知した身体を二年振りに眺めれば、
  傷跡が増えており思わず触れる。
  この女に傷をつけるだなんて、余りにも冒涜だ。
  
  
  
  「どうだった、向こうの二年は」
  「愉しかったわよ、みんな、必死で」
  「行ってすぐに無政府状態になったろ」
  「んん…そうだっけ？」
  
  
  
  大した愛撫もなしに受け入れるには、
  彼女が言う通り時間がないらしい。
  動いている内に濡れて来るだろうという、
  余りにも杜撰なやり口でも構わない。
  
  
  挿れた瞬間の感触。
  がゆっくりと息を吐いた。
  
  
  キロランケに跨ったまま、互いに手を握りゆっくりと動く。
  この体勢からを見上げる事が一番多い。
  は騎乗位が好きだし(髪型が崩れないし、
  奥まで入るからだそうだが)キロランケも好きだ。
  
  
  下方から見上げるは美しい。
  その身体も、顔も、表情も、全てが美しく脳に直接刺さる。
  
  
  
  「何でそんなに急いでるんだよ」
  「長居出来ないのよ」
  「すぐに飛ぶのか？」
  「そう」
  
  
  
  徐々に緩急をつけ、動きが激しくなる。
  の腰を両手掴み、強く動いた。
  中がぐっと狭まる。
  ほぼ同時に、出来るだけ抑えた声も漏れだし、
  そのタイミングで体勢を変えた。
  
  
  途中、体面座位の状態で一旦停止し、
  がキロランケの唇を舐めた。
  
  
  久々に見つめる顔は二年前と変わらない。
  それはそれで不思議な、不自然さに思える。
  変わったところといえば髪型くらいだろうか。
  
  
  最初の頃は、それこそ猿の様に盛っていたが、随分歳をとった。
  この女を好きに出来るだなんて、
  それだけで何よりも気持ちがよく思えたが、
  そういう話ではないという事を知る。
  
  
  この女の唯一の欠点。
  それは―――――
  
  
  
  「後ろからにして」
  「どうして」
  「髪が乱れるでしょ」
  
  
  
  誰とでも、好きな時に好きな相手と寝る事だ。
  情事の後を残させない。
  どういう性質なのか未だにしっかりと把握出来ていないが、
  とりあえずそういう女だ。
  
  
  本気になっては馬鹿を見るし、だからといって手放すには惜しい。
  確かには一言だって、愛の言葉を囁かない。
  彼女は他人に愛を囁かない。
  
  
  にとって愛とは与えられるものであり、
  誰かに与えるものではないのだ。
  
  
  その事に気づいた時、
  どこまでも傲慢な女だと呆れたがやはり憎めず
  (そもそも、自分たちもそんなを好きに味わうのだし、
  そんな義理はない)今もこうして抱いている。
  
  
  この女がバックから犯せと言うという事は、次がいるという事だ。
  だったらなあ、。俺は何番目だよ。
  
  
  
  「…っ、あ、」
  「中にいい？」
  「だめ」
  
  
  
  耳側で囁きながらを抱き締める。
  これには恐らく何の意味もない。
  
  
  誰にも特別でなく、只消費するだけの身体を持て余す。
  の指が床に引いた布をきつく握った。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  「次はどこに行くんだよ」
  「よく知らないのよ」
  「もう少しここにいろよ、」
  「無理」
  
  
  
  情後の余韻は許さないのだとは言う。
  
  
  
  「何になるのよ、そういうの」
  「えぇ？思いの共有とか…？」
  「体液以外にないわよ」
  
  
  
  あんたと共有するものなんて。
  なんて、とても下品な事を笑いながら言う。
  
  
  そう。世界はこの女のステージだ。
  何人も横に並ばせる事なく、の世界は最初から一人で収束する。
  
  
  
  「次はないのかい」
  「近くに来たらね」
  「待ってるよ」
  
  
  
  もう振り返りもせず部屋を出て行くに、その背中に投げかける。
  まったく、あの女だけは手に負えない。
  
  
  二年振りの感触を思い返し反芻していれば、
  急にドアが開いて相当驚いた。
  谷垣だ。
  
  
  
  「…何してんすか」
  「ちょっと…」
  
  
  
  犯されて。
  半裸の状態で壁にもたれ床に座るキロランケはそう言う。
  がこの備品庫から出て来る姿を確認し、
  そこにいると確信したのだ。
  
  
  そりゃ確かに遠からずでしょうけど。
  真顔の谷垣がそう言うものだから、流石に笑った。
  
  
  
  
  

  先輩尾形番外編�A
  とんでもない女を爆誕させました
  誰得なのか分からないが書きやすいので私得…？
  キロランケにはとりあえず谷垣がついてきます
  というか、ここの特務機関はみんなセックスセックスで
  仕事してないんじゃねえのという疑問が生じてます
  仕事しろ、仕事
  
  
  2017/12/07
  
  NEO HIMEISM