残された者の方が悲しいのだ

• 男とが店に入り小一時間だ。
  店から丁度、死角の位置に車を停めた尾形は
  双眼鏡を片手にあんパンをぱくついていた。
  
  
  店内の二人は最高級のフレンチを味わっているはずなのに、
  こちらはコンビニで調達したあんパンと牛乳だ。
  とんでもない格差だぜと笑う。
  
  
  そもそも、こういう事を行うのは初めてではない。
  元々諜報課という性質上、真っ当な任務での張り込みは兎も角、
  こののように私情で動く場合も侭ある。
  
  
  というか、思い返せば八割程度は絡みだった事に気づく、
  やれやれまったく、あの女は本当にとんだ疫病神だ。
  
  
  そう言えば昔、突撃部隊絡みの一件があった。
  キロランケとが寝始めたのはあれからだと記憶している。
  あの男も大変解り易い、所謂ステレオタイプの人間だ。
  女の趣味に関しては。
  
  
  そんなキロランケがに手を出すなんて当然の展開過ぎた。
  尾形にしてみれば、何もそんなにややこしい沼に
  沈む事もないのではないかと思うのだが、
  どいつもこいつもという沼に容易く沈む。
  彼女の意思とは無関係に。
  
  
  今夜のお相手ともそうなるはずで、この店の後はいつも通りのパターンを辿る。
  という事は朝までコースだ。
  
  
  の名を使うとなると際限なく可能性は広がる。
  この代償は何で支払って貰おうか、なんて事を考えていた。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
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  そんな尾形の死角にはいた。
  土方に探りを入れて来いと言われた足で向かったのだ。
  
  
  まだ麻酔は完全に切れていない。
  尾形はここで誰かを張っているらしく、そんな尾形を張る羽目になった。
  
  
  
  (あの女…)
  
  
  今朝の出来事を思い出す。
  、あの女。
  
  
  そんなつもりはないのに、あの女を見ると昔の自分が浮かぶ。
  嫌な事を思い出させる女だ。
  あの無力で、その自覚もなく、庇護される存在。
  あの頃の自分を否が応にも思い出させる。
  だからの事が嫌いなのだと思う。
  
  
  では尾形は？
  尾形に関しては如何なる感情も伴わない。
  
  
  あの組織を壊滅させた後、
  どうにか生き永らえていた最悪の時期に遭遇した男。
  この街で生きていくには不可欠な男だ。
  何より糧になる。
  
  
  だけれど尾形と土方が絡みだし、少々事がややこしくなり出した。
  考え出せばきりがなく、悶々としながら煙草の吸殻だけが足元に散らばる。
  そもそも何を張り込んでやがる―――――
  
  
  その時、レストランから人が出て来た。
  二人。男と女だ。男と女。
  
  
  男と―――――
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
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  「はっ？あいつ何して―――――」
  
  
  
  が出て来た瞬間だ。
  視界の隅から何かが飛び出して来た。
  思いがけない展開に視線を向ける。
  
  
  。
  
  
  すぐに人物の判断は出来たが、如何せん理由が紐づかない。
  
  
  えっ、何であいつがここに。
  目線だけが辛うじてを追う。
  右手に銃が確認出来た。
  
  
  
  「！！！」
  「！？」
  
  
  
  女の叫び声が聞こえ、反射的に顔を向けた。
  痩せた女だ。
  ミニドレスに網タイツという安く派手ないで立ちの女が
  こちらに銃口を向けながら走り寄って来る。
  
  
  目にした瞬間、も構えた。
  だがしかし、あんな娘に一切覚えがない。
  
  
  ふと背後の男、門倉―――――
  今回の食事の相手である、
  民間軍事会社から出向してきた外部委員会の男を見れば、
  非常に動揺している。
  視線が合えば苦笑いで返された。
  
  
  
  「嫌だ、いつもは私の役目なのに」
  
  
  
  駆け寄る女の後ろ、尾形が車から降り、こちらへ来ている。
  
  
  
  「隅に置けないわね」
  「うわぁーマジか」
  「この娘、殺していい？」
  「いやぁーそれはー」
  
  
  
  のらりくらりと非常に優柔不断だ。
  こんな事態に陥る理由も納得だ。
  そうこうしている間に娘はすぐそこまでたどり着き、
  と銃口をつきつける事となった。
  
  
  
  「殺すぞババア」
  「何？このクソガキが」
  
  
  
  多少の諍いを起こしつつ、
  隙をついたがの銃を叩き落した。
  そのまま殴り倒す。
  
  
  
  「尾形！！」
  「ああ、分かってる」
  
  
  
  とりあえず門倉を離脱させる事を優先した。
  こんな時、阿吽の呼吸でやり取りが出来る尾形は重宝すべき人材だ。
  一々、指示を出さずとも尾形は門倉を確保し離脱させた。
  銃口を向けたまま、立ち上がろうとするの腹を蹴る。
  
  
  
  「お嬢ちゃんは、あの男の何？」
  「お前こそ」
  「私は何て言うの、同僚よ。
  　まあ、お嬢ちゃんが思っているような事を
  　これからやるつもりではあったんだけれど」
  「！！！」
  「落ち着きなさいよ」
  
  
  
  どうしたって私には勝てないんだし。
  
  
  
  「嫁も子供もいるわよ」
  「！？」
  「何？あんた知らなかったの？」
  「……！？！？」
  
  
  
  あの優柔不断な男が、
  既婚を隠しちょっかいを出した程度の話かと思っていただけだ。
  こんなに若い娘だし、直情的に銃口を向けるだなんて
  痴情の縺れ以外に考えられないのだが。
  
  
  銃を仕舞い、唖然とするに手を差し伸べる。
  シカトされた。
  
  
  
  
  
  
  
  

  前回更新が3月だったらしく

  どうやら二か月ぶりの更新となりました

  しかも、相当前から第一話をUPし忘れていて

  取り急ぎUPし直した次第デス〔ごめん〕

  あと、今回の更新では

  ビバヒル系ヒロインがとうとう出て来ませんでした

  自分で書いてるんですけど、ヒロイン三人いたら

  書くのが死ぬほどめんどくさいです
  

  
  2018/05/27
  
  NEO HIMEISM