道化師のようだね
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ご存じないのはあなたばかり
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どうして俺じゃ駄目なんだと何度も尋ねるエースに、
はっきりとした答えを出さなかった事が問題だったのだ。あんたが駄目だとか、
そういう事じゃないのよエース。はそう言い、明言を避ける。
だからややこしくなってしまった。クルー達は皆、この光景を笑いながら見ている。
分からねぇから聞いてるんじゃねぇか。エースの言葉も納得出来るもので、だからだ。
本当の事を言えないでいる。
「お前、いい加減に折れちまえよぃ」
「どうしてよ」
「お前が今日どこで何を言ったとか、何してたとか。そんな事ばっか言ってるよぃ、エースは。
悪いヤツじゃねぇって、知ってるだろぃ」
「そんな事言わないで」
あんたはそんな事言わないで。マルコは嘘を吐く。平気な顔をしてだ。
平静を装って嘘を吐く。あたしが愛してるのはあんたよマルコ。口には出さずとも分かっている癖に。
「俺の事は気にするなよぃ」
「そういう事じゃないでしょ」
「もう終わった事だぜ」
終わった恋を引き摺っている自身を知ればエースは笑うだろうか。
終わったなんて言うんなら視線で追わないで。優しくなんてしないでよマルコ。
自分ばかりが終わりきれず認めきれず、マルコの本心を知りたがる癖に怖がっている。
本当の事を知るという事はとても恐ろしい事だ。見えないものを見るという事は。
「エースはお前を大事にするよぃ」
「やめてよ」
「忘れろ、」
「やめて」
まだこの男を愛している。それはマルコにも知れていて、だから彼はこんな嘘を吐く。
目前にぶら下がった幸せを掴まないを馬鹿だと言い、嘘を吐く。
マルコにこんな嘘を吐かせる自分にもうんざりだし、勝手に零れ落ちる涙にもうんざりだ。
最後に一度だけ抱き締めてと呟けば躊躇しながらもマルコは抱き締めてくれるだろう。
その腕は心を縛りつけるだけなのに。口を噤んだを見下ろしたマルコは溜息を吐き出し、
もう俺にはどうする事も出来ないと呟いた。
2010/2/3(悲恋・・・?)
模倣坂心中 |
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