オレのみっともない欲望

もう少しだけ汚して

いいから俺を連れ出してくれよと笑ったエースは、恐らく疲れていたのだろうと思う。 マイペースを絵に描いたような彼だが、その実、周囲を異常なほど気にしているのだ。 誰が何を話しているか、そうしてどこに誰がいて、何をしているのか。 伺っていない振りをしながら、全体を広い範囲で把握しているのだ。 何故がそんな事を知っているのかといえば、余り近しい距離にいなかったからに過ぎない。 この男達の世話を焼かなければいけない立場にいる以上、 誰か一人の相手をしているわけにもいかず、 親父の元に薬を持って行かせたその足では皆が集まる食堂へ顔を出した。 薬の調合を得意とする彼女を捕まえたのは一番隊のマルコだ。 親父の調子が芳しくなくなった辺り、そこらの医者ではラチが明かないと思った彼は の噂を聞きつけ、彼女の元を訪れた。古から伝わる妙な業を使うと言われる一族の末裔。 はたった一人、街中で薬草を売っていた。様々な薬草売りが立ち並ぶ通りで、だ。 傷跡が残らない安価の薬草を売ると評判の店だった。 マルコを見上げ、話を聞いたは首を振り、 老衰には何者も太刀打ちが出来ないと答えたが、半ば強引にマルコは彼女を連れ去った。 特に抗わなかったは、船に乗り込んでも変わる事無く、 痛みを和らげる薬を調合したり、血圧の調子を整える薬を調合したりと 出来る限りの事はしていたが、やはり老衰を止める事は出来なかった。 それでも気分が晴れるらしく、白ひげはを酷く気に入り、 彼女は専属のチームまで手に入れた。白ひげ海賊団二十番隊。医療を主に行う隊だ。 仲間は好きな奴を選べばいいと言われたものの、今のところ一人しか所属していない。 元々気の付く女だったようで、誰かが怪我を負えば駆けつけ手当てをしたり、 隊長を崩せば顔を出し、薬を調合する。皆がの名を覚えるまで、そう時間はかからなかった。


「…どういう意味なの?それ」
「そのままさ、俺ァ余り、駆け引きが出来ねぇもんで」
「その割には馴れてるみたいだけど」
「深読みするなよ」


食堂のドアを開ける寸前にエースがそれを阻止した。手を引かれ、食堂からどんどんと離される。 こういった節のある男だとは聞いていたが、いやはや。確かにここまで強引ならば阻止は出来ない。


「断られる可能性は考えないのね」
「だってお前、断らねぇだろ?」
「どうしてよ」
「いっつも俺ばっか見てるからねぇ」


照れる事無くそんな事を言う。いや、確かに見てはいたが(この男は兎角、目に付くのだ) そんな下心があったわけでなく、疲れやしないのだろうかと、 そんな気遣いにより見ていただけだ。只、そんな事を面と向かい言えるわけもなく、 言葉尻を濁していれば二十番隊の部屋へ到着してしまい、 あれよあれよと言う間に押し倒された。こんな昼間から盛るだなんて、若い証拠だろうか、 等と悠長に構えられない事態だ。遠慮なしに腰辺りから指先が駆け上りブラを押し上げた。 ワイヤーが曲がっては堪らないと背を浮かす。


「ちょっと、エース!」
「もっと甘えた声で呼んでくれ」
「ちょ、ちょっと!あんた、酔ってるの!?」


首筋に吸い付くエースから酒のにおいはしない。 同じ船の中で面倒を考えずに欲望のまま手を出す。 噂は本当だった、だなんてそんな確認はしなくてもいいのだ。


「わ、ちょっと」

「あ」


どうにか逃げ出そうと身を捩っていれば、エースの身体がそのまま重なり、 身動きが取れなくなった。はっきりとした拒絶を見せる事が出来なかった自分のせいなのだろうか。 肌蹴た胸にエースの舌が滑り、恐らくここが最後の拒否どころになると思え、 エース、と名を口に仕掛けるが、それよりも先にエースの指が舌の上に乗りそれを阻止する。 ああ、どうしよう。このままじゃあ―――――


「怪我ァしちまったんだが、、手当てを―――――」
「んん!!??」
「おっと」


ドアが開き、マルコと目が合う。 マルコは流石に驚いた様子で(まあ元々表情の読めない男だけれど)一瞬間が開いたが、 そのままドアを閉めようと―――――


「まっ、待って!!」
「!?」
「たすけ」


助けてという言い方が適切だったかどうかは分からない。も必死だったからだ。 ああ、それなのに腹の上に座った男はの口を掌で塞ぎ、マルコの方へ視線を向けた。


「…どうするんだ、マルコ」
「…俺ァそんなに若くねぇんだよぃ」
「思い出さねぇか?なぁ」
「まったく、悪い遊びを教えちまった」
「お前が連れて来た女だろ」
「お前が気に入っただけだろがぃ」
「俺ァ知ってんだよ、お前らこそこそと―――――」
「あァ、うるせぇよぃ」


何の話なのか、まるで見当がつかないがいい方向に話は転がっていないようだ。 マルコがドアを閉め、鍵までかけた。鍵とマルコを交互に見る。 そうして最後にエース。マルコが服を脱いだ。ちょっと、待ってよ。 意識をそちらに取られていれば、エースの指が内部に侵入。下腹部に力が入る。


「俺ァ、お前の事を気に入ってんだぜ、
「そんな奴が、こんな真似、するかよぃ」
「こんなやり方しか出来ねぇんだ、俺ァ」


べたつくようなエースの言葉を聞きながら、視界に入って来たもう一人の男に意識を移す。 別に悪びれる様子もなく、極自然に髪を撫でられればいよいよ目を開けている余裕もなくなり、 目を閉じた。

2010/4/13(マジ最低な話でごめんな)
模倣坂心中