愛してくれない?
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私達は出逢ってしまった
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まるで運命のように出会い、当然のように惹かれ、
そうして二人は一つになっただなんて言えば出来すぎた物語のようで背筋が震える。
冬島で出会った時、まああんな環境の仕業なのか壁一つなく打ち解ける事が出来た。
はその島で暮らす女だった。仕事の関係上、
真冬の二週間を雪山の中で過ごすらしく、たまたまその島を訪れたエースは自然の驚異に晒され、
辟易とした状態で山小屋に駆け込む。目前一センチの距離さえ白く濁り見えなくなったからだ。
山小屋の中にはいた。女が一人で何をしてるんだいと挨拶もなしに問えば、
こんな場所に半ば裸で来る人に言われたくないと言われ笑う。
この吹雪は一週間は続くわよと続けた彼女は、エースの素性を探らなかった。
只、暖かいコーヒーとサンドウィッチを差し出し、凍傷を負った指先を見つめ、バスタオルを投げる。
誘っているのかいと笑えば、その指先で何が出来るのと呆れられた。
暖かい湯船に浸かっていれば、どうやら身体は随分疲れていたらしく、
どっと眠気が襲い掛かる。バスタオルを腰に巻きつけた状態で暖炉の前に向かい、
そのまま眠りに落ちたらしい。気づけば毛布がかけられていた。
翌日も吹雪はやまず、まずは互いの話から始めようとかと提案すれば、
暇つぶし程度にはなるだろうと彼女も承諾。ここで名前を知り、彼女がこんな山小屋で何をしているのかを知った。
雪深いこの山には凶暴な獣が棲みついていると言う言い伝えがある。
随分古い言い伝えらしく、その獣の姿を確認出来るのは書籍のみ。
何故、肉眼で確認出来ていないのかといえば、
こののように山小屋で数週間を過ごし、身を食われるからだ。
要は生贄のようなもので、人一人分の生贄を得れば獣は息を潜め、又雪深くに戻る。
死ぬ為にこの小屋に来たのかと言えば、そうよと答えた。
聞けば、一番の腕利きを選び、山小屋へ行かせるらしい。
あわよくば返り討ちにして来いという事か。
「そいつは、怖ぇな」
「…まぁね」
「喰われちまうかも知れねぇんだろ?怖ぇさ」
だから俺が助けてやろうかと囁いたエースに助けを求めなかった理由は特にない。
獣の正体は分かっていたし、戻らなかった人々の理由も分かっていたからだ。
あの国は自由のない、息苦しい国だから皆、逃げ出しただけの話。
独裁者から面倒もなく逃げ出す口実に獣を選んだ。
突然、姿を見せたこの素性の分からない男が独裁者の関係者ではないという確証は持てない。
「なぁ、。獣が来るまで、まだ時間はあるんだろう?」
「それは分からないけど」
「男と女がこんな環境で二人きりなんだ」
「そうねぇ」
「やる事なんざ、一つしかねぇだろ?」
「…そうかしら」
勢いよく上着を脱いだ男の背に釘付けになっただけだ。それも一瞬だけ。
同時にこの男は関係者ではないと確信し、掌で弄ぶような戯言を楽しむ事にした。
白ひげ海賊団のマークを背負った男と、俗にいう熱い夜なんてものを過ごす。
いや、昼間から翌日の朝にかけて。
暖炉の熱よりも更に熱い温度をまとい、服なんて着る暇もない。
轟々と鳴る吹雪は一向に止む気配はなく、後先を考えない行為に没頭する。
この数日だけの話だと踏んでいたからだ。いい思い出になると思っていたから―――――
確かに、思い出にはなった。すっかり吹雪の止んだ翌朝、
寝息をたてるエースを横目に山小屋を出たはそのまま、国境を越える。
二度と会う事はないだろうと思っていた。
「…あら?」
「!!」
亡命を約束した男は海賊になり、そのままも船に乗り込んだ。
が生贄に選ばれた際、最後までそれを反対していた、の意図が読めない男。
真面目な男だ。とは違い、真っ向から国を捨て、
あの山小屋まで迎えに来ると約束した男。
まさか、あの山小屋内でが他の男と絡んでいるとは夢にも思っていない彼は、
あの頃も今もの事を心の底から愛している。片時も離したくない程に。
まあ、それでも特に構いはしないかと思いながら
新世界へ向かっていればだ。まさかの展開に、眩暈がした。
「…どうして、逆走してるのよ」
「いや、そりゃあちょっと、事情があってな」
「凄く、久しぶり」
背に受ける散々な視線には気づいている。
どうやら目前のエースも、背後の視線、ローの視線には気づいたようで、
一度だけ笑った。至極、楽しそうに。
察してくれないかとも思ったが、恐らく無理だろう。
船に戻った後の事を考えれば気が滅入り、
このまま逃げ出してしまおうかとも思ったが、それも面倒なので止めた。
2010/4/23(ローとエースを無理矢理に絡ませてしまった…。)
模倣坂心中
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