溺れても
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最果てより
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荒んだ町で暮らす人々はやはり荒んでおり、
そんな中にすっかり馴染んでしまっているエースもも、
随分汚れた暮らしをしているのだろう。余り客観的に自身を見る事は得意ではない為、曖昧な想像に留まる。
それにしても下卑た怒声の響くこんな安酒場は余りにも似合う。にも、自分にも。
ベルベット生地のドレスを辛うじて身に纏い、
白い肌を見せ付けるように腕を伸ばすは見る見るうちにグラスを開けていくわけで、
その費用は一切彼女持ちではない。そういえば、最初に目にしたのもここだったと思い出し、
似たような真似ばかりをしているものだと呆れた。出会い頭こそ劇的で、にめがけ一直線に進み、
まぁそのまま格好良く連れ去ろうとも思ったが、勢いよく平手打ちを喰らったもので断念せざるを得なかった。
「お前を捜してる奴らがいたぜ」
「あいつらも大概しつこいわね」
「俺が、蹴散らしてきてやろうか」
「やめてよ」
面倒が増えるだけだと呟き、又グラスが空いた。
この薄い身体のどこに吸い込まれていくのだろうと不思議に思い、飲み干す喉を見つめる。
「あんたといるなんて知れたら、それこそ事だわ」
「だろうな」
「嫌になる」
この薄汚れた女は余りにも煌びやかな世界に囲まれている。
それからどうにか逃げ出したいと、身体を汚し心を汚し、それでも逃げ切れないでいる。
最初に寝てから三月ほどだろうか。その位の時間が経過した頃にはポツリと吐露した。
一人になりたいと思ってたけど、死ぬほど怖いわ。薄暗い室内、淋しい景観。
情事後の気だるさを物ともせず、ベッド上で肩膝を立てたまま彼女はそう呟いた。
何となく同じような思いを抱いていると思いながらも告げないでいた。意味がないと思ったからだ。
淋しさの共有なんてたかが知れている。
「あんたにも良くないわよ」
「うん?」
「あたしの側にいるのは良くないわ」
琥珀色の液体が動きを止め、がグラスを置いた。
微かに潤んだように見えるのは、酔いが回っているからだろうか。
「いいんだよ、俺の事は気にするんじゃねェ」
「何がいいのよ。適当な事、言って」
「この世界の全員にどう思われようと、俺ァいいんだよ」
「…」
「俺が好きな奴に好かれてりゃ、それでいい」
「…何よそれ」
それって、あたしの事なの。の声は微かに震えていた。
グラスを奪い、琥珀を飲み干す。
この気持ちも荒んでいるのだろうかと思ったが、答なんて出ない。
2010/9/16(淋しがりやの二人)
模倣坂心中
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