痛みの息の根を止めて

オールド・ローズは戻らない




*創作甚だしいので、原作無視禁止の方はスルー推奨


海軍に対峙した事がないわけではなかった。 海賊を生業としているのだから海軍とは隣り合わせて生きているからだ。 それでも、これだけの数を前にした事はなく、流石に息を飲んだ。 親父が先陣を切り、続くようにマルコが向かった。そうしても。 真っ直ぐにエースの元へ向かった。 これまで生きてきて、世界の全てが平等でない事くらい分かっていたつもりだ。 生まれにしても育った環境にしてもその全てが平等でない。 その考えから見ると、海賊が悪で海軍が善というわけでもないのだ。 それでも奴らは完全にこちらが悪だと決めてかかる。そんな矛盾にも、もう慣れた。はずだ。 だからこちらに向かってくる新兵にさえ躊躇せず刃を向ける。命を奪う為に全身をたぎらせ咆哮をあげる。 そうして、エースを助ける為に。


「エース!!」
「…!!」


エースが海軍に捕らえられたと知ってからこれまで胸の奥が重く吐き気の止まらない日はなかった。 気が狂いそうなほど叫び泣き、そんな状態でも救いを求めた。頭の中では理解っていたはずだ。 誰も助けてはくれない。そんなにもこの世界は都合がよく出来ていない。 産まれた時から分かっていたはずだ。世界は誰にも優しくなく、平等でないと―――――


「エース」
「…」
「エース…」
「…


だから最後の最後、終わりの瞬間に世界は平等を寄越したのだろう。 エースの胸にぽっかりと開いた穴はの身体にも開き、地に倒れ伏したまま辛うじて指先を向けた。 もうこれで二度と離れる事はない。この戦争で誰が生き残ろうが悪と正義、どちらが勝とうが興味もない。 そのどちらも真実でない。時代の拍子に変わってしまうような曖昧な定義だ。そんなものだ。 目に見えないそれらよりも只、エースが欲しくて、触れたくて。 喧騒からも解き放たれ、これでようやく全てが終わったのだと、



2011/5/21(禁断の死ネタ)

模倣坂心中