愛を探してる それがどんなものか
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エナメルの殻を割って孵る
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手にしている時には何とも思わず、いざ手元を離れると急に執着心が芽生える事はよくある。
どうやら自身はそういう性質らしく、思い返せばガキの頃からそれの繰り返しだった。
手に入れるまでは欲しくて堪らず、いざ手に入れると途端に執着は薄れる。玩具やモノなら次に欲しいものを見つけるだけで飢えは癒せたが、
ところがどうしてそれが対人となるとそうもいかないようだ。アレはすぐに形を変える。
手に入れて手放したら最後、同じ生き物のはずなのに、まるで違う生き物に変わっている事も侭あり、
同じような執着心が芽生えるものだと知った。知ったところで一度手放したそれがのこのこと戻って来る確率は限りなく低い。
だから今こうして焦がれているのだ。言い訳するわけではないが、こんな気持ちになったのはこれが初めてで、未だ脳が処理出来ないでいる。
一度は手に入れ、そうして満足したというのに、どうして今になりこんなにも恋しいのだろうか。手に入れた後、身勝手にもほぼ放置したのは確かに自分だし、それが原因でが愛想を尽かしたのも理解できる。
「今日、に会ったよい」
「!」
「相変わらず元気だな、あいつは」
だからこうして夕飯の際にマルコが何の気なしに言った一言でさえも耳に付く。こんなに焦がれる俺の心を見捨てて消えていった女だなんて見当違いの恨みさえ。
「…どこで会ったんだい?」
「…」
「何で黙るんだよ」
「あいつがお前には言うなって」
「!」
マルコには会う癖にどうして俺とは会っちゃくれねェんだとか、そもそも何で我慢してくれなかったんだ、だとか思う所は色々とあるわけで、
やはりこれは一度顔を突き合わせて話をする他ない案件だと思うのだが、当のはこうして防波堤を作りエースを近づけない。あいつにはあいつの人生があるんだぜ、だなんて言われても納得出来るか。
「おい、サッチ!から連絡来たら速攻で代わってくれ」
「何だよいきなり」
「マルコ!マルコもだからな!」
「俺らを巻き込むなよぃ」
夕飯のエビを茹でたものを食べているマルコは呆れたようにそう言う。巻き込むなと言われても巻き込む。そんな事くらい皆、分かっている。から連絡が来たら、何食わぬ顔をして代わる予定だ。偶然を装って。無駄な話を延々と繰り返して、虚栄も何もかもは分かっているはずだ。こちらの思惑はとっくに知れていて、彼女にとって何でもない事なのだと思い知らされるだけなのだ。
2015/11/25(久々三人組)
模倣坂心中
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