踊れ、踊れ
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螺鈿の亀裂
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あと一歩がどうしても踏み出せず、これが二の足を踏むという事なのだと思った。 まさかこの自分が二の足を踏む事になるだなんて、それはとても新鮮な驚きだ。
いつまでも何もかも変わるはずはないだなんて、それはきっと幻で、どうやら当然の展開になるらしい。 あの時(恐らくは)泣いていた彼女も、今はこうして目前に対峙するまでだ。なぁ。
俺に焦がれて泣いていたは、どこにいっちまったんだい?そうは思うが、口には出せない。余りに情けないからだ。 目前に経つ彼女はまるでモノでも見るかのような眼差しでこちらを映している。恐らくはあの頃の自分と同じような眼差しだ。
確かにあの頃、自分はモノを見るような感覚でを見つめていた。その事はとうのにも知れていて、きっと恐らくだから彼女は泣いていたのだ。
当然の反応だと思える。だからといって今、自分自身涙が出るかと問われればそんな事はあり得なく、只そんなものなのだと納得をするだけだ。
「よぉ、」
「…懐かしい顔だと思ったら、エース。よくも顔を出せたわね」
「たまたま近くに来たからよ、顔でも見てェなと。お前の」
距離を近づけない理由は一つだ。得体の知れない気配。知っているはずの女から発される得体の知れないそれ。
「海賊になったってのかい、」
「何?先輩面でもしようっての」
「ああ。そうだねェ」
そういうのは大事だ。
「よくねェもの、喰ったんだろ、お前も」
「どうかしら」
「喰ったさ。喰うはずだ、お前は」
「相変わらず、知った風な事ばかり言うのね」
「ダメかい?」
全身がじっとりと熱を帯び、まるで自身が蜃気楼のようだ。きっとの目前でユラユラと揺らめいている。 こんな予定ではなかったが、随分と琴線を刺激する。自身の思いさえあやふやで、相も変わらず欲望ばかりが先行し嫌になる。
お遊び程度に炎を燻らせ、冗談序でに火の粉を飛ばした。眼差しの色を変えたが一歩を踏み出し、その刹那、堪え切れずに笑ったエースは、どうせ明日になれば又何かが変わるのだと嘯いた。
2016/7/16(目的が未だない男)
模倣坂心中
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